生きるチカラを信じて支える ケア・インターナショナル ジャパンは、貧困の根源の解決に向け、災害時の人道支援を行うとともに、「女性や子ども」に焦点をあてた活動を通して、最も困難な状況になる人々の自立を支援しています。
東日本大震災ブログ

"今"を生きていく [木村雅子のブログ]

[ 2012.6.20 ]

CAREでは、山田町、大槌町で被災した個人事業者の操業再開支援を行っています。商工会と役場を通じた広報などで広く案内を行い、原則として他の支援を受けていらっしゃらない個人事業者の方を対象に、一人30万円を上限とする資機材などの提供を行うもので、両町合わせて66件の支援を実施しています。
そのうちの一件、山田町の服飾店『赤とんぼ』に空調機取り付け工事の立会いのため訪れた時、オーナーの小林くに子さんがふと、次のような言葉を漏らされました。

「震災を経験してから、生きることと死ぬことの境について考えるんです。その二つはとても近い。だから、今、頑張って生きなければと思うんです。」
"今を大切に"、"今を一生懸命"、そうした言葉はこれまでにも、時に触れ、いろんな場所でいろんな方が口にされるのを聞いてきました。しかし、小林さんが口から漏れてきたその言葉は、これまで耳にしたものとはまた違う、ずっしりとした重みを伴って感じられました。

震災から1年3か月後の山田町。
少しづつ、少しづつ前に...。(2012年6月20日撮影

『赤とんぼ』は、小林さんが27年もの長きにわたって大切に作り上げ、営んで来られたセレクト・ショップでした。ご自身で東京まで仕入れに出向き、直接、自分の目で確かめて納得できた品物だけを並べ、お客さんに提案する。商品の値段は少し高めだけれど、その分の贅沢を、暮らしの中の心の贅沢として提供したい。そうした想いが込められたお店でした。

震災が起きた時、小林さんはいつも通りお店にいらっしゃいました。海に近いそのエリアで、避難しようとする人々を自家用車に乗せ、近くの高台まで何度も往復したそうです。
そして大津波と火災が去った後、小林さんが人生の時間を費やしてきた店は跡形もなく失われていました。避難に使った車の他は何一つ残りませんでした。離れた地区にあったご自宅も全壊し、身近な方も亡くされました。
その時、小林さんは、「もう店の再開はしない」と考えたそうです。

小林さんの背中を押したのは、商店街が無くなり生活の機能が停滞した町で、衣類を求める町の人たちの声でした。震災から3ヵ月経った6月初旬、商工会が公園の敷地内に建てた大型テントの仮設商店街の一角で、「赤とんぼ」は再び営業を始めました。地面にベニヤ板を敷き詰めただけの売り場には、とにかく必要とされる肌着類や簡易な衣類から並べ、地域の声に応えました。それから半年以上。テント商店では、商品をそのまま置けない程のひどい結露や、ヒーターが壊れる程の真冬の冷気など、大変なことが多かったといいます。しかし一方で、週に一度、必ず店を覗かれるようになった90代の女性とのおしゃれ談義のお話しなども、楽しそうに話してくださいました。このテント商店街での営みが、小林さんの心を本格的な営業再開に向けて自然に固めていく助走期間だったのかもしれません。
震災からおよそ一年後、小林さんは、商工会が新たに建てたプレハブ2階建ての仮設商店街での出店を決意され、CAREと出会いました。

プレハブの店内は、手に入れられる小物を工夫して飾られて、お話しで伺った以前のお店のイメージを少し彷彿とさせるような心華やぐ空間に仕上がっていました。
震災前と変わったことが二つ。一つは店に置かれた商品の種類です。テント商店街で新たな顧客となった高齢者向けの洋服が加わりました。もう一つは店のスタッフ。新しい店舗では、無事だった息子さんのお嫁さんもスタッフとして一緒に働かれています。
「こうしたお店の営業ができるのは、被災地にも少し、生活と心の余裕が出てきたからこそ。そう考えると嬉しいです。毎日の生活に絶対必要というものではなく、ゆとりの部分だからこそ、ここに来られるお客さんには日常から少し離れられる時間を提供したいんです。」
新しい店では客層も広がって、洋服をセレクトする楽しみが増えたと、小林さんは前向きな表情を見せてくださいました。

「震災を経て人の価値観は確実に変わったと思います。」
「裏手の坂を越えて山田町の景色が開けると、そこには本当に何もないの。その景色がだんだんと自分の中で当たり前のものになっていくけど、そうやって忘れていってはいけないですね。」
小林さんのつぶやきは、一つ一つ、重みを持って届いてきます。
小林さんは、これから新たなプレハブの店舗で、被災地に暮らすお客さんと語り、震災の体験を通じた様々なことに思考をめぐらせながら、これからの"今"を生きていかれるのだと思います。その"今"が、新しい明るい未来への糧として積み上がっていくことを願います。

山田仮設商店街1.JPG

「赤とんぼ」の新店舗が入った仮設商店街。
(山田町八幡町)

赤とんぼ小林さん.JPG

向かって左が小林くに子さん。
プレハブ店舗内にて。

赤とんぼ花瓶.JPG

震災前、色に魅かれて購入された大型の花瓶は
当日たまたま車に積んであったため残りました。
共に震災を越え、新しい店で一緒に時を重ねます。











関連リンク
CAREの活動を支援する
東日本大震災被災者支援事業

本件に関するお問い合わせ先

Tel: 03-5950-1335 広報担当

  • CAREパッケージ
  • CARE支援組織
  • ジェンダーハンドブック
  • フォトギャラリー
  • accountability2012.jpg