生きるチカラを信じて支える ケア・インターナショナル ジャパンは、貧困の根源の解決に向け、災害時の人道支援を行うとともに、「女性や子ども」に焦点をあてた活動を通して、最も困難な状況になる人々の自立を支援しています。
ニュースリリース

紛争に苦しむ国において言葉が持つチカラ ~東ティモール

[ 2007.4.18 ]

(2007年4月、ディリ)
東ティモールには、定期的な郵便システムは存在しません。古くから、東ティモールの人々は友人や他人の好意に頼り手紙を届けてもらっています。別の町へ出かける家族や友人、またバスやタクシーの運転手が配達人になってくれるのです。しかし東ティモールは山の多い地形であり、通るのも困難なほど整備されていない道路状況は、どんなに意気込んだ配達人にも大きなチャレンジとなります。それでも、大きな目の物静かな11歳のAno*は、辛抱強く手紙の到着を待ちます。

Anoはすでに自分の文通相手が誰かを知っています。なぜなら彼は数カ月も前に、初めての手紙を同じ4年生の文通相手の子に宛てて書いているからです。Anoの書いた手紙は、新しい形の配達人によって文通相手に届けられました。その配達人とは、東ティモール13地域の28万校の子どもたちに児童雑誌Lafaekを届けるために、困難な道をバイクで定期的に行き来する13人のCAREスタッフの一人です。Lafaekは、母国語にあたるテトゥン語で発行されている唯一の児童雑誌で、市民教育、平和構築、子どもの権利などの話題を提供しています。このLafaekを届けるために作られた配達システムを生かし、CARE は東ティモール中の子どもたちを、子どもたち自らの言葉によってつないでいくことを実現しました。

4,5,6年生の子どもたちは、異なる地域に住む同じ学年の子どもたちに、他の誰かに読まれる心配をすることなく自由な内容の手紙を書きます。文通制度は、子ども、先生や女性の権利についての情報を提供するCARE のHaburas Labarik ('子どもたちの育み') プロジェクトの一貫として行っています。手紙を交換することで、子どもたちは表現の自由という権利を体験すると共に、お互いの生活について学ぶことで地域の違いについての理解を深め、友情を育てていきます。

Anoの文通相手のPutuはディリから200キロ離れたOecussiという、隔離された地域に住んでいます。Anoは、もっとOecussiについて知りたいと思っています。「手紙の中で、PutuにOecussiはどんなところか聞いてみたんだ。いいところか、悪いところかって」とAnoは話します。「あと、学校でテトゥン語やポルトガル語を習ったり、友だちとサッカーをやって遊ぶことなど、僕の好きなことについても書いたんだ」。

現在、Anoは彼の好きなことに以前ほど時間を費やすことができなくなっています。これは、Anoの自宅近くで起こった若者による暴動の影響で、二カ月前から、彼の家族が約1000人の人々と共にディリにある教会の敷地で避難生活を始めたからです。「争いの音が聞こえてきたとき、僕はとても怖くなったんだ。怪我をする人たちを見たし、殺された人もいたと聞いたよ」とAnoは振り返ります。今年初めに首都ディリ各地で再び起こった暴動により、既にディリ周辺に散らばる難民キャンプで生活を強いられている何万人もの人々に加え、新たに約8千人が避難民となりました。ディリで昨年4月に14万人の避難民を出した暴動が発生してから既に1年が経過していますが、未だに約3万7千人の人が難民キャンプで生活をしており、また7万人が郊外で親戚の家に身を寄せています。

Anoの家族は6人で、小さなマットレス1つと持ち物を入れる籠1つだけがあるテントで、他の10名の人々と一緒に生活しています。キャンプに住む子どもたちはほとんど玩具を持っておらず、輪ゴムと棒を使って輪投げをしたり、多くの輪ゴムをつなげて作った長いゴムの上を、歌を歌いながら跳ぶなど、キャンプにあるものからゲームを考え出して遊びます。

ディリに住む多くの子どもたち同様、Anoも暴動によって何週間も学校に通うことができませんでした。彼は、最近になって近所が落ち着きを取り戻しつつあるために自宅に足を運べるようになったこと、また時折学校に通えるようになったことを嬉しく思っています。将来人を助ける仕事に就きたいAnoは、勉強を続けることの大切さを説明しています。「大きくなったら医者になりたい」と彼は言います。「多くの人が病気になるのを見てきているので、医者になることが彼らを助ける一つの方法だと思っているよ」。学校では、暴動で怪我をしているのではないかとAnoが心配していた親友のSimaoと再会することができます。また、間もなくCARE OecussiのスタッフからCARE Diliのスタッフ Gremaldo を介して届けられる、長く楽しみにしていたPutuからの返事も受け取ることもできます。

現地のCARE スタッフは、子どもたちの重要な手紙の配達人であると同時に、参加校に情報の入ったパッケージを配布し、先生や生徒に対して文通活動についての説明も行います。2004年に文通活動が開始した際には、東ティモール全地域、260校の6543名の子どもたちが活動に参加しました。そのうちの95%が新しく知り合った友だちとの文通を今後も継続していきたいと話しています。昨年4月からの情勢不安が手紙の配達を中断させたため、子どもたちは通常より長く返事を待たなければなりませんでした。現在は活動が再開されつつあり、Anoや彼のクラスメートたちは初めての返事を5月初旬までに受け取ることができそうです。それ以降のCARE の文通活動では、最終学力テスト期間中と卒業式の時期を除いて月一回、手紙が配達されていきます。

コミュニティの分裂や競争、偏見が暴動を駆り立てている状況の中で、相手に対する理解を促進し、橋渡しをすることは以前にも増して重要となっています。Anoは、人々が結束することの大切さを信じる一人です。「僕は、政府に他の人々と一緒に力を合わせてこの危機を解決してほしい」と彼は語ります。次の手紙で彼が新しい友達と分かち合いたいことがたくさんあることは、言うまでもないでしょう。

*CARE は子どもたちの安全に真剣に取り組む団体です。本文で使用されている子どもたちの名前は、子どもたちの安全を確保するため変更されています。

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