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地球規模の経済危機が世界の貧困層に及ぼす影響
CARE International 報告書(2009年3月)

比較的最近まで、今回の経済危機は世界の最貧困層の人々に対しては大きな影響を及ぼしていなかったが、CAREの現地事務所が2009年3月初めに終了した調査によると、CAREが活動しているほとんどの地域において、この経済危機の衝撃が今まさに実感されており、今後何カ月にもわたり、かなりの速さと激しさを持ってこの衝撃が増大していくことになるとのことである。

もし世界経済が予想通りに悪化の一途をたどるなら、貧困に対する闘いにおいて事態を逆行させるきっかけとなってしまうだろう。現在、10億人近い人々が1日1ドル以下で生活している。世界銀行では、今回の経済危機は、新たに5300万人の人々を貧困*へと追いやることになると推定している。1997年から1998年にかけてのアジア通貨危機の結果、インドネシア一国だけで、貧困層の人数が倍になったことを考えれば、その深刻さは明白といえる。

* 1日2ドル以下。「潮流に逆らって泳ぐ-開発途上国はどのように世界経済危機に対応しているか」というレポートから。(世界銀行、2009年3月8日付)

経済危機は、貧困層に与える影響という観点から、どのような形で現れつつあるのか。
今回の経済危機は、昨年から途上国を揺るがした一連の衝撃の中で最も新しいものである。2008年前半の食糧危機や燃料価格の高騰に、過去1年間の継続的な紛争や一連の自然災害が重なり、最貧国の中には危機に対応するためのメカニズムがほぼ破壊されてしまった国もある。多くの貧しい国にとって、今回の経済危機は十分に決定的な一撃となり得る。

経済危機の衝撃は、時間の経過とともに途上国のいろいろな部分で、異なる程度とさまざまな様相を呈し、表面化しつつある。貧困層に与える影響は、それらの人々や住んでいる国がどの程度、世界経済や地域経済に組み込まれているかということに関係している。そのため、今回の危機の初期の衝撃は、まず比較的発達した金融市場や工業部門を持つインドのような国々において見られた。一方、これとは対照的に、世界の金融市場へのアクセスが限られているエチオピアのような国々は、同じような初期の打撃を経験しなかった。しかし、現在の景気後退の影響を将来的に最も受けることになるであろう国は、貧困ラインすれすれ、または、貧困ラインより少しよい程度の生活をする人口の割合が高く、行政機関の統治能力が低い最貧国である。

世界金融システムにおける危機から発し、すでにこれらの貧しい国々に影響を及ぼし始めている主な要因には、商品価格の急激な下落が含まれる。これにより失業率の増加と、銅の主要輸出国であるザンビアやペルー、石油や天然ガスの輸出国であるエクアドル、ボリビア、ダイヤモンドや鉱物資源の輸出国である南アフリカ、マダガスカルなどの国々の歳入の減少が見られ始めている。これに関連して、カンボジア、ボスニア、インドなど多くの国の建設部門やインフラ開発における減速が見られるようになってきており、当然このことは、失業率や低調な経済活動にさらに追い討ちをかけるものである。

今回の金融危機は、多くの途上国の中小企業にますます重圧をもたらすことにもなっている。これは、世界的な需要が弱く、外国からの直接投資が落ち込んだことに起因している。CAREの現地事務所の報告によると、多くの企業は従業員を一時解雇し始めており、その規模と速さは増しつつあるようである。

今回の金融危機のもう一つの重要な帰結は、より裕福な国々での失業が増加しつつあることである。これにより、現在3000億ドルを超えている途上国への送金額の落ち込みが生じている。世界各地のCAREスタッフは、ホンジュラス、エルサルバドル、ボリビア、パキスタン、レソト、リベリア、ガーナ、ケニア、エジプト、ヨルダン、ボスニア、グルジア、ネパールなどさまざまな地域への送金額の落ち込みが広範で、深刻なものになっていると報告している。送金額の落ち込みに関連して、出稼ぎ労働者が経済危機の影響を強く受けた国で失業し、ネパール、ボリビア、ミャンマーなどの貧困国に帰国している。さらに、中東地域で将来、大規模な一時解雇が行われる可能性があり、また、その影響を受けた南アジアや北アフリカ地域で、失業と送金額双方の面での悪化が懸念される。

したがって、傾向は明らかである。途上国の貧しい人々はより高い失業率に苦しみ、以前より低い所得しか得られないという状態になってきている。政府の税収と外国からの投資による歳入は下がっており、最も弱い立場にある人々に対する社会福祉と貧困削減のための政策に資金を出せるだけの財政力も落ち込んできている。そしてこれは、まさにその必要性が一層強くなっているときに生じている。

途上国の最貧層の人々に与える経済危機の衝撃は、壊滅的なものになる可能性がある。家計が圧迫されることで、親たちは子どもを退学させ、家計を助けるために子どもを働かせざるを得なくなるだろう。とりわけ、児童搾取を含む児童労働、売春や犯罪行為の増加が予想される。多くの場合、都会で職を失った人々は故郷の村に帰るので、このことが農村地域にすでに存在する問題にさらに拍車をかけることになる。

世界各地のCAREスタッフは、これらのさまざまな衝撃は、今、現れ始めており、CAREの事業実施地域の人々に影響を与えていると報告している。バングラデシュでは、人々は以前よりも食べる量を減らし、栄養のある食べ物の摂取量も減らし、生き延びるために資産を売却し始めている。カンボジアでは、学校に入学する少女の数が減少してきている。

この危機に対応するために何がなされるべきか。
途上国で現れ始めている現在および将来起こり得る経済危機による影響と、貧困層に及ぼす影響についてのCAREの初期レポートを前提として、CAREは、途上国と先進国の双方が速やかに以下の行動を取るよう提言する。

途上国が取るべき対応
1.政府は、予算編成にあたって、社会的セーフティネットを貯蓄の一つの選択肢として捉えるのはではなく、セーフティネットそのものに対する予算を確保する、あるいは増やすべきである。

2.政府は、波及的に少しずつ現れる効果を期待するのではなく、貧困層が直接的利益を得られる方法を明確に示した経済刺激策を策定すべきである。

3.経済危機への対応策の一つとして、政府は農業部門を支援する対策を検討すべきである。農業部門は、貧困層を雇用する主要な産業部門であり、また食糧確保の面で有益であることに加え、他の産業部門への連鎖的効果もある。

4.政府は、貧困家庭の子どもたちが学校での勉強を続けることができるよう、対策を講じるべきである。そうすることで、教育の中断や短縮により、長期的な開発によって得られる利益が損なわれることを回避できる。

5.政府は、予算編成の過程で引き続き市民社会の参加を促すべきである。

支援国が取るべき対応
1.この重大時には、現在コミットしている支援を維持することが必須である。特にアフリカの国々のような裕福でない国の多くは、未熟な社会保護政策やセーフティネット政策のための資金調達を外国からの援助に大きく依存している。経済危機の衝撃が根を下ろし始めるにしたがって、より多く人々が政府の支援に依存するようになることを考えると、これは重要である。

2.支援国は、予算を緊急に再検討し、途上国の優先度の高い社会部門のニーズに最大限の資金が確実に投入されるようにすべきである。

3.政府が最貧困層にまで支援を行き渡らせるだけの能力と意志に欠けた途上国において活動を行う市民団体に対して、支援国は別途資金支援を増やすべきである。

4.国際的な金融機関や支援機関は、支援受入国政府の負債返済能力に及ぼす経済危機の影響を考慮すべきである。

5.先進国は、貧しい国々が経済危機の影響に対応できるよう、財政刺激策に要する資金の0.7%を「脆弱国向け基金(vulnerability fund)」に拠出すべきであるという世界銀行の要求を支持すべきである。


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