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パキスタン:カイバル・パクトゥンクワ州初等教育向上事業
(北西辺境州からカイバル・パクトゥンクワ州に名称が変わりました。)

期間
2009年1月12日~2011年1月11日
地域
パキスタン、カイバル・パクトゥンクワ州アボッタバッド県アボッタバッド郡6地区
対象者
対象地域の20の小学生に通う小学生、並びにそのコミュニティの地域住民
ドナー
国際協力機構(JICA) 、(株)ラッシュジャパン、その他
事業規模
約5,000万円(2年間)
カイバル・パクトゥンクワ州初等教育向上事業

北西辺境州

背景

パキスタンは、識字率が低く、教育へのアクセスが悪く、就学年齢の子どもたち数百万人が学校に通えていません。また男女格差が大きく、まだまだ女子教育への理解が低く、貧しい家庭では女子より男子の就学を優先しています。女子の就学率の低さの要因には、経済的な障害以外にも、女子教育に否定的な社会文化的背景もあります。これらに加えて、次のような状況もあります。

・誰が学校運営委員会(PTC)のメンバーであることを、本人を含め知らないことが多い。また知っていても、PTCの役割を知らないので、何ができるかがわからない。
・国際機関や他団体がPTCへの研修を実施しても、メンバー8名のうち2名しか研修に参加できず、全員に研修内容が周知されていない。また、研修は1回限りで、その後研修に参加したPTCへのフォローアップ支援がない。
・「教育問題は教育局が解決するもの」という意識がコミュニティにあるとともに、学校が抱える問題点をコミュニティは教育局と共有したことがないので、教育局に伝わっていない。
・対象コミュニティは遠隔地域であるため、教育局がほとんど訪問する機会がなかった。

このような中、「住民による学校運営」ができるように地域住民の基礎力(ガバナンス力)を強化し、特に教育にかかる諸問題に対して地域住民が自ら行動を起こせるようになることによって、男女問わず子どもたちの教育への機会が拡充することを考えたのが 、Enhancing Education Quality, Access and Learning (EQUAL)事業です。事業地であるアボッタバッド郡の6地区は、郡都市から車で山道を片道3時間ほどかかる山岳地域で、郡都市よりも保守的な環境です。2005年10月の大震災の後、大きな被害を受けたけれども、あまりにも郡都市から離れているために支援がほとんど入らず、2008年時点でも未だテント学校で授業が行われているところも多くある地域です。今回20の小学校(10の女子小学校、10の男子小学校)とそのコミュニティが対象となりましたが、11の小学校はテント学校でした。

逆転の発想

このような状況を考慮し、EQUALは次のように取組みました。
・学校運営委員会(PTC)が誰であるかをコミュニティで確認し、PTCの役割と責任を周知し、必要に応じ、教育局の立会いのもとメンバーの再選出を実施しました。この結果、20あるPTCのうち、全員女性メンバーのPTCが5つ、女性が70%を占めるPTCは5つ、160名のメンバーのうち、67名は女性となりました。女性メンバーの数が増えることで、女子学校の女性教員は、今までPTCが男性ばかりだったので相談したいことも相談しづらかったが、安心して相談できるようになりました、との報告もありました。
・父母グループ(各学校/コミュニティから10名の母親と10名の父親)を新たに組むことで、親の意見が反映されやすくなりました。自分たちが動くことは、自分の子どもだけではなく、他の児童や学校全体の向上に繋がることが理解され、積極的に学校運営に参画するようになりました。
・ボランティア・グループ(各学校/コミュニティから5名)を新たに組みました。就学児童の親でなくても、教育に関心が高く、子どもたちのために何かしようという意欲の高い人が選出されます。この人たちはPTCでも父母グループに入っていない住民たちとの架け橋となり、PTCと父母グループの後押しする存在となりました。
・PTC、父母グループ、ボランティア・グループへの研修は、
1)一部ではなく、グループ全員が参加、
2)研修場所は基本的に対象小学校で実施し移動の手間と制限を取り除く、
3)1日の研修時間は最長で3時間とし参加者の負担にならないように配慮しました。
この結果、「自分たちの学校」という意識が定着しました。また、日々密なフォローアップを行い、「何かをしなさい」とは言わないけれど、常に安心して相談できるように、プロジェクト・スタッフは支援しました。
・教育局関係者に現状を理解してもらえるように、四半期毎に各コミュニティで開催した四半期会合や、地区ごとで複数の対象コミュニティが集まって、自分たちのコミュニティの抱えている問題や対処法を発表・討議できる年次教育会議などの機会などに参加できるような機会をできるだけ多くするようにしました。

事業の成果

2年間の事業を終え、地域住民は次のようなことを自分たちで考え行動に移すようになりました。
・今まで「学校問題は教育局が対応するもの」と考えていた住民は、「自分たちの学校」という意識に変わり、教員増員や教室の増設、学校の再建、等に関し、自ら教育局や県復興ユニットに交渉に行き、増員・増設、等に改善されました。地方の山岳地域に住んでいる人々にとって、郡中央の政府関係者と話をすることは今までに無いことで、自分たちの話を聞いてもらえないのではと不安に思っていましたが、回数を追うごとに自信をつけ、粘り強い交渉を行えるようになりました。また、今までコミュニティが直接交渉に来ることがなかった政府関係者にとっても良い刺激であるとともに、コミュニティが直面している問題点を理解できるようなりました。
・PTC、父母グループ、そしてボランティアを中心に、学校に頻繁に訪問するようになりました。その結果、今まで教員や生徒の出席・遅刻状況や衛生状況が悪かった学校で改善がみられました。この3グループは、学校に通っていない児童の家庭訪問を行う、就学キャンペーンを実施したりして、教育の重要性をコミュニティ全体で理解してもらうように啓発活動を繰り返しました。
・男性たちは文化・社会的な背景から女性たちがアイディアを持っているのに対応できない(例:車輌で片道3時間以上かからな中、郡都市まででていき、郡教育局関係者と協議をする)際には、積極的に彼女たちの代理として交渉の場に臨みました。
・女性にとって様々な活動を自分たちで行うことや、人前で自分の意見を発表するようになったことで、大きな自信をつけました。今までは隣の村にも行ったことのなかった彼女たちは、年次教育会議のように地区毎で集まる際に、男性たちの理解を得て移動したことも、自信に繋がっています。女性たちの変化は、男性の理解無くては実現することができず、男性たちも彼女たちを積極的に支援するようになりました。今まで社会的観念により「女性は何もできない・してはいけない」と思われていたけれども、機会が与えられれば意見を述べ、行動できることがわかり、コミュニティに正のインパクトをもたらしました。
・例えば教員を増員したいときに、「(例)たくさんの生徒がいるのに教員が少ない」のように漠然とではなく、「(例)93名の生徒がいるが、教員は1名だけで対応するのは困難だ」というように具体的な数値を用いながら話すことで、相手を説得しやすくなることが理解されました。
・「外部」が何かしてくれるのを待つのではなく、自分たちが問題と思っていることが、コミュニティ内で解決できることなのか、「外部」の手が必要な際は誰に掛け合えば良いかを考えるようになりました。例えば、あるコミュニティでは、教室を増設するためにコミュニティ内で募金を募り、資機材を購入し施工業者と交渉しました。最初から何でも「外部」に頼るのではなく、まず自分たちの資源(含む、人的繋がり)を見直し、それで対応できなければ徐々に広げていきるようになりました。また、自分たちの行動に責任を持ち、学校再建工事のモニタリング等も行うようになりました。自分たちの行動が変化をもたらすということは、コミュニティの人たちにとって大きな自信となっています。「今まで問題だったということはわかっていたけれども、誰かが対処してくれるだろうと思っていました。でも、この事業を通じて、自分から行動すれば、いろいろなことができるようになり、状況も改善できることがわかりました。今後は、教育分野だけでなく、他のことに関しても同じようにみんなで協力していきたいと思います」。 本事業は終了しましたが、この事業を通じて新たに学んだ協働による力、問題解決のための状況確認とそれに対する解決策の模索、行動力や自信、などが、パキスタンの人々の生活を少しでも役立つことを願います。

関連リンク

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