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2003年 12月号(「植林」特集)



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          ケア・ジャパン ニュースレター

        **読むだけで国際協力**  2003年12月1日
          < http://www.carejapan.org >

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 【コンテンツ】
★ ネパールの植林
★ 日本の森林の現状
★ 中国の砂漠化と緑化対策

 今月号のテーマは「植林」です。人口増加により薪の需要が増え、急激に森
林減少が進むネパール、人口林を大量に作っておきながら、東南アジアからの
輸入木材に頼るようになり森林が手入れされなくなってしまった日本、そして
砂漠化が農地をむしばむ中国、それぞれの国で解決方法が模索されています。

【ネパールの植林】∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
今回はネパールで起こっている森林減少とそれに対する植林事業についてです。

★森林減少の理由★
日本の人なら誰もが知っている童話に「桃太郎」があります。その冒頭に、「お
じいさんは柴狩りにでかけました。」とあります。ここで言っている「柴」とは、
何のことでしょうか?「柴」とは、「山野に自生するする小さい雑木。また、薪
や垣にするためにその枝を刈り取ったもの。」のことです。つまり、おじいさん
は薪を取りに山に行ったわけです。昔はガスなどの燃料はなく、薪を使って生
活していました。ガスなどの燃料が発達している現代の日本人には想像しにく
い生活だと思います。また、実際に薪を使った経験のある人も少ないのではな
いでしょうか。

しかし、発展途上国の多くの国では、未だにガスなどの燃料ではなく薪を使っ
ていて、ネパールでもそういう生活が続けられています。では、なぜ大昔から
森林から薪を取っていたのに、今になって森林減少が始まったのでしょうか?
ネパールでは急激に人が増えたために森林からの薪の摂取量が増えて、森林減
少が起こってしまいました。国連人口局によると、1995年から2000年までの
ネパールの年平均の人口増加率は、2.4%です。この数字は、人口が急激に増え
ている印象の強いアフリカと同じくらいの値です。ネパールの人々は、このま
ま森林から薪を取り続けたら森林が減ってしまうことを知っていましたが、薪
を取らないと生活できないというジレンマのもとに薪を取り続けていました。
何かいい方法があれば、森林保全をしたいと以前から考えていました。

★植林活動★
ネパールでは、外国政府による政府開発援助(ODA)や外国NGOなどにより
植林活動が続けられています。今回はその中でも、ある日本のNGOによる森
林保全を目的とした植林活動を紹介します。ここでの森林保全とは、住民が薪
を取りながらも森林減少を招かないように森林の木の量を保つことを意味しま
す。今回紹介する活動は、現地で苗畑を運営し現地住民に植林をしてもらうも
のです。苗畑とは苗を植林できるまで育てるもので、現地住民が有給で苗畑管
理人として専属に苗を育てています。苗畑で育てられる苗の種類・量は、日本
事務所が決定するのではなく、現地住民からの聞き取り調査をもとに現地事務
所が決定します。畑で育てられた苗は現地住民に頒布され、現地住民によって
植林されます。植林後に動物が植林した場所を荒らさないようにフェンスで囲
います。このとき多くの植林事業では、木がちゃんと生長するまで誰も入れな
いように完璧に囲ってしまいますが、この活動では住民が森林に入れるように
しておきます。そうしないと、住民が森林に入れないため新しい薪を集めるこ
とができず、生活に困ることになってしまいます。
苗畑の栽培量は住民からの聞き取り調査をもとに決めていますが、実際には苗
畑の苗すべてが植えられるのではなく、苗畑に苗が3割くらい残ってしまいま
す。このことから、聞き取り調査時の住民の需要と実際に植える数にギャップ
があることがわかります。住民からの要望を鵜呑みにするのではなく、実際に
植林する苗の数を計画しないと、無駄が生じてしまうこともあります。

★住民参加の植林★
以上のように今回紹介した植林事業は、住民参加型の植林事業と言えると思い
ます。しかし、今回紹介した事業の方法では、植林事業自体から事業運営のた
めの資金が調達できません。これでは、自立した住民主体の植林事業にはなり
ません。そこで最近植林用の苗畑の栽培とともに柑橘類などの換金作物の栽培
が始まりました。この換金作物についても、栽培の動物の被害にあわないよう
にフェンスで囲います。換金作物の栽培により、現金収入が期待できます。こ
の収入を植林事業の運営資金にあてることにより、住民参加型から住民主体の
活動にすることができます。しかし、まだ換金作物の栽培は始まったばかりで、
その効果は不明です。

どのような植林事業がよいのかを一概に言い切ることは難しいですが、今回紹
介した住民参加型の植林事業のほうが、日本人がただ現地におもむいて木を植
えて帰っていくよりは、現地住民に理解されやすいのではないでしょうか。

【日本の森林の現状】∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
★必要なこと、それは間伐★
今月号は植林がテーマですが、日本の森林の場合必要とされていることは植林
ではなく、むしろ植林後の手入れです。日本では第二次世界大戦後、木材生産
を目的として成長の早いスギやヒノキといった針葉樹林を一斉に植えていきま
した。人工林は木が成長して、過密状態となってしまうと日光が届かなくなり、
丈夫で立派な木として育つことができなくなってしまいます。そこで必要とさ
れるのが、筋のよい木を大きく成長させるために、その周りの木を間引きする
間伐です。

★間伐をしないとどうなるか★
しかし今の日本の森林は問題に直面しています。日本の人工林のうち7割が手
入れを必要とするのですが、林業の人手不足のため間伐できないままいたると
ころで放置されてしまっているのです。木材を育む以外にも、間伐のされてい
ない森林は私たちが生きていくのを支える重要な機能を果たせなくなってしま
います。たとえば、緑のダムともいわれる森林のスポンジのように隙間の多い
土壌は、草地の2倍、裸地の3倍も水を浸透させる能力があります。その水を
樹木などの植物が体内に取り込んだり、地下水などの形で維持したりしている
ために、しばらく雨が降らなくても川の水が干上がることはなく、逆に大雨が
降っても洪水になりにくいのですが、手入れをしないとこの能力が低下してし
まいます。
また土砂の流出や崩壊を防ぐ動きも大事です。1年間の土砂の流出量は森林が
わずか2トンなのに対して、裸地では15トン、荒廃地では307トンもの土砂
が失われて、自然環境に重大な影響を及ぼしているのです。
地形が急で、雨の多い自然条件の中で非常に多くの人が暮らしている日本にと
って、森林が果たす役割は非常に大きく、平成三年の林野庁の試算では、水資
源の涵養、土砂流出防止、土砂崩壊防止、保健休養、野生鳥獣保護、酸素供給・
大気浄化という森林の有する公益的評価額を計算すると、年間39兆2000億円
という国家予算に匹敵するといわれています。

★森林荒廃の原因★
ではなぜ日本の森林は十分な手入れがなされなくなってしまったのでしょうか。
日本は国土の3分の2が森林に覆われていて、現在は木材需要の9割を自給で
きる蓄積になったにもかかわらず、木材となるべき木が有効に使われていませ
ん。それは戦後の高度経済成長の時期には急増した木材需要に供給が間に合わ
ず、東南アジアなどの海外から安価な木材を輸入したことからはじまり、1960
年代からの貿易自由化による関税引き下げでさらに木材輸入量が増加してしま
ったことが大きな原因です。現在のところ木材の8割を海外から輸入していま
す。
ただでさえ長い時間手間ひまかけて育てる木は、おじいちゃんが植えて孫の収
入になるといわれるように、植えてから何十年もたってやっと商品となります。
人件費が高く、一年中温暖な東南アジアと比較して成長の遅い日本の木材は必
然的に高くなったため、海外の木材に比べ競争力を失い、割に合わなくなった
林業からどんどん人手がなくなっていったのです。

★復活へ向けての試行錯誤★
さて、こんな深刻な状態の日本の森林を手をこまねいて見ているだけでなく、
よみがえらせようとたくさんの人々が活動をしています。
たとえば持続可能な森林管理のための指標を設け、これを満たした森林を第三
者機関が認証し、そこから産出された木材にラベルをつけて流通させる制度を
使い、その認証を木材の付加価値として活用している林業家もいます。しかし
これは中小の林業家には認証の取得できる森林をつくるのにかかる負担がまだ
まだ大きすぎるという問題があります。また林業家の中には、人工林を育てる
間の収入源として、好む土壌が似ていてスギと相性のよいアジサイをスギの根
元に植え、アジサイ園を試みている人もいます。
林業家だけでなく、一般の人でもボランティアとして、手入れの行き届かない
森林を訪れ、間伐などのお手伝いをするという活動をしている人もいます。こ
のボランティアは私たちもできることですが、もっと手軽にできることといえ
ば、間伐材を使うということです。日本の森林では、山から下ろすのに費用が
かかるため、間伐された木はその場に放置しておかれます。この間伐材も有効
な資源の一つなので、間伐材でできた商品を使えば、東南アジアなどで無駄に
新しい木を伐採せずに済むのです。間伐材を使った商品はインターネットなど
で購入できます。
またクリーンエネルギーの一つとして、最近ではこの間伐材を木質ペレットな
どにしてバイオマスエネルギーとして使うという動きもみられます。西欧です
でに使われているという杉の間伐材を燃やした発電システムは、森林の活性化、
地域経済の振興、木質系廃棄物の処理、化石燃料の節約に寄与するなど、たい
へん興味深い例でもあります。
このようなたくさんの対策で日本の森林の危機的状況を乗りきろうとしていま
すが、残念ながら、どれも目立った成果を上げられずにいます。まだまだ試行
錯誤の段階だといえるでしょう。

【中国の砂漠化と緑化対策】∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
★中国における砂漠化★
中国と言えば、広大な国土と約13億人にも上る人口が思い浮かびますが、そ
の中国で深刻な問題となっているのが国土の砂漠化です。現在、中国には、北
西の内陸部を中心に国土の砂漠化が進行しており、砂漠化の恐れがある地域も
含めると、実に国土の約3割が砂漠化の脅威にさらされています。中国で砂漠
化が進んだ背景には、乾燥と強風という気候的な要因に加えて、人為的な要因
が大きく影響していると言われています。過剰な放牧や強引な開墾、森林の伐
採などにより荒れ果てた土地に強風で飛ばされてきた砂が覆い被さり、土壌の
乾燥が進んだ結果、その土地が砂漠化してしまうのです。こうして数十年前に
は緑が豊かであった土地が、現在は砂漠化していることが少なくありません。
このような砂漠化は毎年確実に広がっており、周辺地域に住む住民の生活をよ
り困難なものにしています。

★移住を困難にする戸籍制度★
土地の砂漠化により住民が大きな被害を被っているのであれば、その土地を離
れて別の土地に移住すれば良いのではと思いがちですが、中国で移住すること
はそう簡単ではありません。
中国では1958年に制定された戸籍制度により、農村出身者と都市出身者の戸
籍が厳密に区別され、農村から都市に移住することが非常に困難になっていま
した。この結果、農民は与えられた土地で農業を営んで生計を立てるか、ある
いは都会に出て都市労働者がやりたがらない仕事をする出稼ぎ労働者になるし
かありませんでした。また、生活が苦しい場合には麻薬の密売に関わる者が出
てくるなど、戸籍制度は農村部で生活水準が改善されない原因の1つになって
きました。現在、農村出身者と都市出身者を区別する戸籍制度は各地で徐々に
改正され、移住に関する規制が少しずつ緩和されてきていますが、制度が完全
に廃止され、その恩恵を受けて農村出身者の生活水準が改善されるに至るまで
にはまだ時間を要するものと考えられます。

★ケア・ジャパンの活動★
ケア・ジャパンでは、こうした砂漠化地域で生活している住民が砂漠化防止に
取り組み、耕作可能な土壌を再生するために、現地の県政府と協力し、緑化活
動を行ってきました。活動場所となったのは、中国北西部に位置する甘粛省古
浪県で、農業人口が総人口の95%以上を占める農村地帯です。
この地域は元々、年間平均降雨量200mmと少なく、さらに海抜1,500m〜
3,500mの高地のため気候が寒冷であることから、農耕可能な期間が限られて
います。さらに、北西から常時吹き付ける風により流動砂丘が南東に移動し、
耕地が砂の下に埋まってしまい耕作不能になると共に、風砂害により広範囲の
耕地・草地で深刻な土壌劣化が進行しています。
これらの事情により、耕地からの単位収穫量は毎年下降の一途をたどっていま
す。住民の中には、生計手段として零細規模の家畜飼育を伝統的な手段で行う
と共に、農閑期に他地域に出稼ぎに行くことによりわずかな現金収入を得てい
る者もありますが、それでも農業に生活を大きく依存する地域住民の暮らしは、
土地の生産性低下に伴いますます困窮を極めています。
ケア・ジャパンの活動では、家畜飼育の支援を中心にしながら、耕作可能地の
減少を防ぎ、耕地の生産性を高めるため、地域住民とともに草方格(そうほう
かく)を設置したり防砂林を造林する活動を実施し、砂漠化防止に取り組んで
きました。また、事業実施地の住民に働きかけ、住民集会などを通じて砂漠化
に対する危機意識の共有を促す活動も行ってきました。こうした流動砂丘の固
定化や防砂林設置の手法、および意識改革は着実に現地指導者および住民のも
のになってきており、毎年激しい風砂害に悩まされてきた住民にとって大きな
力となっています。

★草方格を利用した緑化★
古浪県における活動では、流動砂丘の固定化に、草方格と呼ばれる手法を用い
てきました。
草方格とは、麦わらなどを利用した、砂の移動を防止する手法(およびその設
置物)のことです。この手法は、流動砂丘の砂を固定するのに非常に大きな効
果があります。流動砂丘では、水不足の他に植物が育たない大きな原因として、
砂の移動が挙げられます。風によって絶えず砂が移動すると、植物の種が地表
にさらされたり、逆に地中の奥深くに埋まってしまうことで、発芽自体が困難
になります。草方格を利用すると、砂の移動を食い止め、植物が土壌に定着す
るような環境を整えることができます。また、草方格にはそれ自体に保水効果
があるため、雨水によって得られた水分を植物に持続的に供給できるという大
きな利点もあります。
大変有効な手法である草方格ですが、その設置に特別な技術や資材は必要あり
ません。草方格を設置するには、砂地に約1メートルの間隔で格子状に細い溝
を掘っていき、その溝の中に乾燥地に生える植物の種を蒔きます。次に、この
溝の上に麦わらを並べていった後、麦わらの真ん中の部分を溝に沿ってスコッ
プで地中に押し込むと完成です。この方法で植えられた植物の種は、麦わらで
守られることにより、土壌に着実に根付くことが可能になります。
こうして設置された草方格では、設置場所や環境による差異はあるものの、数
年後にその一帯の緑が大きく回復することも期待できます。そのため、草方格
によって風砂害による影響を抑えて耕地の生産性を高めるのに加えて、牧畜業
を営むために必要な牧草を草方格で生育するなどの方法で、住民の生計を直接
的に支える手段としても活用されています。


 今回はネパール、日本、中国という3ヶ国での植林をテーマとして考えてき
ました。植林といっても、ただ「木を植える」というところで終わるわけでは
ありません。なぜその地域で植林が必要なのか、森林を住民の生活の中でどう
位置付けていくのかという視点が欠けると、植林が本当に成功したといえる状
況にはならないのではないでしょうか。

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【編集後記】∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
ちなみに今回例にしたネパールの植林事業をしている地域に行くには交通機関
がなく、徒歩しかないそうです。それも徒歩で都市から2.5日かかります。
今時の日本人には無理かな。(トリ)
日本の林業を復活させるには月9が一番?!(ソノ)
草方格ですが、本当に効果がすごいんだそうですよ。写真をお見せできないの
がちょっと残念。(アツシ)

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