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ケア・ジャパン ニュースレター
**読むだけで国際協力** 2004年7月1日
< http://www.carejapan.org >
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今月のテーマは「障害者支援」です。今年5月、日本においても「障害者基本
法」の一部が改正されるなど、近年、障害者の自立と社会参加を求める社会的
気運はますます高まりを見せています。障害者が個人の尊厳をもち、分け隔て
なく生活できる権利は、必ず守られなければならないものです。今月は、世界
各地の障害者に対する取り組みを紹介します。
※「障害者」とは、「先天的か否かにかかわらず、身体的又は精神的能力の不
全のために、通常の個人又は社会生活に必要なことを確保することが、自分自
身では完全に又は部分的にできない人」のことを意味します。
(「障害者の権利宣言」1975年12月9日 第30回国連総会決議3447より抜粋)
【コンテンツ】
★ 途上国における障害者支援 〜アジア〜
★ 世界初の障害者差別禁止法 〜アメリカ〜
★ 福祉先進国の取り組み 〜スウェーデン〜
【途上国における障害者支援】∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
★障害者を取り巻く厳しい環境★
世界最大の障害者数を抱えるアジア・太平洋地域では人口のおよそ1割が障害
者であるといわれています。途上国では、もともと先進国のような産業構造で
はないため雇用市場自体が小規模です。障害者は伝統産業において雇用される
場合が多く、障害をもっているだけで職業選択において自由を失っている可能
性もあります。多くの途上国政府は経済発展を目指しますが、経済成長に伴う
産業構造の変化により、伝統産業の位置付けも変わってしまいます。経済成長
を通じ、周りが豊かになっていく中で、伝統産業に従事する障害者がその恩恵
にあずかれない心配もあります。
特に、女性を取り巻く状況は厳しいものとなっています。途上国では障害をも
っている女性を家族が世間から隠してしまうケースが多く、いまだに社会から
完全に隔離された存在になってしまっています。女性のための職業訓練が伝統
的な家事労働に限られる傾向のある社会において、ハンディキャップをもつ女
性の雇用は最も劣後してしまうのが現実です。女性の社会進出については、政
府やNGOなどによる施策が行われているものの、障害をもった女性を受け入れ
ようとする社会が形成されておらず、途上国においては根本となる問題認知か
ら始める必要があるのでしょう。
★雇用問題への取り組み★
国際機関・政府やNGOの働きかけにより、障害者雇用を進める方策がアジアに
おける途上国においても徐々になされてきています。アプローチの方法として
は、伝統産業における障害者の雇用が多いという実態に合わせた伝統産業の職
業訓練の提供や法の整備が挙げられます。雇用奨励策(一定規模の事業所に
一定数の障害者の雇用義務を課す割当雇用制度、職能技能取得支援など)と
雇用差別禁止法を一緒に定めることが一般的です。タイでは1991年に「障害
者訓練法」が制定されました。内容は、日本の「障害者の雇用の促進等に関す
る法律」に該当する規定とほぼ同じです。障害者手帳の発行、支援基金の設立、
医療・器具・教育などの支援、公共施設における障害者設備設置などのほか、
規模に応じた雇用義務(200人以上の事業所については全従業員の0.5%に相当
する数の障害者を雇用)を定めています。
★地域で支える障害者支援活動★
途上国ではリハビリテーションの専門家や設備は都市部に集中しており、農村
部においては、先進国に見られるようなリハビリテーション施設を中心とした
専門的な治療を多くの人に施すことは困難です。また、宗教・慣習に基づく精
神文化や貧困などの理由から、障害者を差別する傾向が強くあります。
このような状況を打破するため、途上国では「地域に根ざしたリハビリテーシ
ョン(CBR;Community-Based Rehabilitation)」が効果的であると考えら
れています。CBRは、障害者本人の身体機能回復のための治療・訓練だけでなく、
障害者自身を含む地域のすべての人々が参加して障害者問題に取り組み、意識
改革を通して差別をなくし、障害者の社会参加を奨励するものです。同時に、
CBR活動から生まれたコミュニティーをその後のさまざまな地域開発に生かす
ことも目的としています。
タイのある農村では、障害児をもつ保護者向けのリハビリテーション指導や
ネットワーク形成などの支援活動がNGOにより実施されました。この保護者た
ちにより新しいリハビリテーション指導の場が生まれ、地域に障害者支援の輪
が広がりつつあります。このように、地域の人々は、政府やNGOによる「啓発」
をきっかけに現状に対する問題意識をもち、自らが組織を形成し、地域全体が
地域の障害者そして自分たちの生活の質の向上のため、主体的に活動していき
ます。
ただし、CBRには問題点も指摘されています。まず根本にあるのは、資源、資
金、専門家の不足の問題です。限られた資源の中で多くの人にリハビリテーシ
ョンサービスを広げようとすると、サービスの質は低下します。さらに、地域
主導という形態により政府の障害者支援に対する責任離れが起こることや、地
域に対する障害者対策における負担やリスクが大きくなることが懸念されてい
ます。
しかし依然として、CBRの途上国における障害者問題解決に期待される役割は
大きく、CBR活動はアジアの多くの地域で行なわれ、成果を上げています。障
害者問題への取り組みに始まる地域コミュニティーを村全体の活性化へと繋げ
ていくには、粘り強い継続的な取り組みが必要です。
【世界初の障害者差別禁止法】∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
アメリカでは1990年に、世界最初の障害者差別禁止法である「障害をもつアメ
リカ人法(Americans with Disabilities Act 以下ADA法)」が制定されま
した。この法律の前身となった1973年のリハビリテーション法では、障害者の
差別禁止規定はあったものの、その適用対象が、連邦政府から財政援助を受け
た機関や団体のみとされていたため、実質的な効力が限定的でした。こうした
問題点を改善するべく制定されたADA法では、差別禁止の適用範囲が民間企業
や地方自治体にまで拡大され、障害者の差別を世界に先駆けて包括的に禁止し
た画期的な内容となりました。ADA法の制定は、各国の政策にも大きな影響を
与えることとなり、制定以後の10年間において40か国を超える国々で障害者差
別禁止法が制定されています。
★ADA法の概要★
ADA法では、法で規定する有資格の障害者に関して、従業員15人以上の事業所
における雇用時の差別が禁止され、事業所に対し、職場を働きやすくするため
の合理的な配慮が義務付けられたほか、公共団体のサービスや事業活動に参加
する際に障害を理由とした拒否や差別が禁止されました。ここでいう有資格の
障害者とは、「合理的な配慮の有無にかかわらず、当人が現在就いているかま
たは希望する雇用上の職位の主要な職務を遂行することのできる障害者」のこ
とで、上記の規定はこの定義に当てはまる障害者に対して適用されます。また、
民間の公共施設やサービスにおいて障害者の差別が禁止されたほか、通信事業
者に対しては、聴覚や言語に障害のある人がコミュニケーションをとるために
必要な通信サービスを提供することが義務付けられました。
このように、ADA法は障害者の差別を包括的に禁止しており、障害者の人権を
守るために社会が負うべき義務を規定した内容となっています。
★ADA法による影響★
ADA法が制定されてから、アメリカ国内では、この法律のもつ意味を理解する
ことへの関心が高まりました。マスメディアや、公共の施設・サービスを提供
する企業や機関などにおいて、この法律の義務を具体的に果たすためにどのよ
うな取り組みが必要であるかが議論され、そうした議論を通じて、多くの障害
者の声が社会に届くようになりました。各企業では、社員に対してADA法の理
解を深めるためのトレーニングなど、障害者雇用についての啓発活動が行われ、
障害者にとって働きやすい職場を提供することに対する意識が高まりました。
交通機関や公共施設ではバリアフリー化が促進され、スロープやエレベーター
の導入、バスへのリフトの設置などにより、各機関や施設へのアクセスが全般
的に改善されました。また、コンピュータや通信機器の分野では、障害のある
人も利用できるように製品に機能が追加されるようになりました。このように、
アメリカではADA法が制定されたことで、障害者に対する社会の意識が高まり、
障害者が利用できる社会的インフラが大きく改善されています。
★ADA法の問題点★
包括的な差別を禁止したADA法は高い評価を受けていますが、同時に幾つかの
問題点も指摘されています。雇用に関して、ADA法では、障害者が自ら積極的
に事業所に訴えて事業所側の対策を促すことが前提となっているため、障害者
の側で時間的または金銭的に余裕がない場合や、知的障害者などのように自ら
積極的に訴えることが困難な場合には、法律上の恩恵が行き届きにくく、能力
の高い障害者や積極的に意思表明ができる障害者に法的な恩恵が限定される傾
向があります。職場環境を整えるために事業所に義務付けられた合理的な配慮
の規定では、配慮に必要な事業所側の負担が過度である場合には規定が適用さ
れませんが、この規定においても、負担が過度であるかどうかの判断基準があ
いまいであることが問題点として挙げられています。また、運用上の課題とし
て、金銭的に余裕がない小規模の企業では、大企業に比べてADA法の理念を有
効に浸透させることが難しい点が指摘されています。
【福祉先進国の取り組み】∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
福祉先進国スウェーデンでは、障害とは「個人に属する特性ではなく、個人と
その人を取り巻く環境に生じる問題である」と定義づけています。政府は「障
害は、総人口の中で必ず一定の割合を占める自然な現象である」として、障害
をもつ人にも地域社会活動参加と平等な機会を提供し、可能な限り通常の生活
が送れるような政策を進めています。
行政は障害をもつ人とその家族が抱える問題について助言と支援を行ったり、
ホームヘルプ、付き添いサービス、移送サービス、特別のケア付き住宅などを
提供したり、重度障害者の雇用を確保したりする責任があります。例えば、障
害があって在宅勤務しかできない場合にはそのための情報機器などを提供した
り、車を運転するための特別な器具を備えつけたり、といったことが当たり前
に行われます。
雇用については、健常者と同等な教育と職業訓練の提供、障害をもつ人々のた
めに特別な雇用条件のもとで雇用を提供する保護雇用や、昼間に通うデイセン
ターでの軽作業における雇用など、経済的な保障を得るための対策がなされて
います。
スウェーデンでは1994年に「機能障害者に対する特別サポート・サービス法
(LSS)」が制定されました。この法律は障害者が個人的なサポート・サービス
を受ける権利を規定しています。市町村がアシスタントを任命するか、個人に
財政的支援を与えてその人がアシスタントを雇うことができます。障害者の意
思と希望を尊重し、日常生活に必要なサービスは国が保障し、国が障害者への
サービスを怠った場合には障害者が国を訴えることができるようになりました。
★スウェーデン障害研究所★
1960年代に世界に先駆けて高齢化社会を迎えたスウェーデンでは、高齢者や障
害者に使いやすい機器の開発が積極的に進められ、1969年には国立のスウェー
デン障害研究所が設立されました。研究所は直接の機器供給は行いませんが、
福祉機器メーカーに協力して新しい福祉機器の開発を支援し、 安全な福祉機器
の生産に向けて検査を行ない、機器の普及に努力しています。福祉機器の検査
方法は規格化されていて、ここでの検査にパスしないとメーカーは福祉機器を
提供できません。厳しい検査をパスした福祉機器だけが、利用者の手元に届く
ことになります。必要とされる福祉機器は、障害者の自立を支援するものとし
て無料で貸し出されます。
★強い影響力を持つ障害者連合★
スウェーデンの障害者団体の活動には100年の歴史があり、様々な障害をそれぞ
れ代表する組織が全国レベルで40余り、その地区協会組織は全国に約2000あり
ます。これらの組織の中心になっているのが「障害者協会連合」です。連合は、
障害を個人と環境の関係の問題と位置付け、メンバーが社会生活を送る上で、
全てのことに参加する権利を行使する実質的な機会が与えられるべきだとして、
様々なサービスへのアクセスを健常者と同じ状態にすることを目標に掲げて活
動しています。こうした障害者の組織は、広報、世論形成、政治的に重要な障
害の問題についての研究といった活動を行い、国や県・市町村から財政的な支
援を受けています。
★高福祉国家のマイナス面★
障害者政策に限らず、スウェーデンは「高福祉・高負担の国」として知られて
います。高負担が可能であったのは、二度の世界大戦を中立国として過ごし、
1960年代前後に経済発展を順調に遂げたからでした。しかし、高福祉国家を実
現するため、1970年代に税金の率をどんどん上げた結果、労働者の負担は高ま
り、スウェーデン企業はしだいに国際競争力を失ってしまいました。そして、
1990年代に深刻な経済危機に陥って以来、現役世代や企業が税金、保険料を負
担する能力は低下していきました。高くなった法人税を嫌って、欧州の他の国
に移転していく企業も増え、有能な若者たちの中では高い税金を嫌ってドイツ
やアメリカなどの会社に転職する傾向が強まりました。国民の重い負担なくし
ては、高福祉は成り立たないという厳しい現実もまた、スウェーデンにはある
のです。
各国の障害者に対する取り組みを見てきましたが、そもそも「障害者」という
表記にも賛否両論あり、「障がい者」「障害をもつ人」「障害のある人」など
の表記の仕方もあります。アメリカでは、近年、「障害者」を意味する言葉と
して、Challengedという表現がよく使われるようになりました。「挑戦すると
いう運命を与えられた人」というポジティブな意味が込められています。表記
の仕方や様々な施策の中身がどのようであるかはもちろん重要ですが、これら
のことが、障害者にとってどのくらい快適な社会を生み出しているのか、常に
考えていく必要があるのではないでしょうか。
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【編集後記】∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
スウェーデンは離婚率が50%だとか。。
先月号のネタにすればよかったかな? (さちこ)
駅で黄色いブロックの上を歩いてみる今日この頃(アツシ)
今年はアテネパラリンピックにも注目ですね!(めぐ)
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