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ケア・ジャパン ニュースレター
**読むだけで国際協力** 2005年6月増刊号
< http://www.carejapan.org >
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今月は、スリランカでケア・ジャパンが行っているプロジェクト「プラン
テーション居住者の生活改善事業(TEA事業)」を特集します。先月行われ
た事業報告会のため一時帰国された、現地駐在スタッフ、プロジェクトマ
ネージャーの栗原さんへのインタビュー内容も含め、TEA事業について紹介
します。
【コンテンツ】
★スリランカってどんな国?―TEA事業の始まり
★権利と責任 −ケアの活動
★プロジェクトマネージャー発TEA事業裏話
【スリランカってどんな国?―TEA事業の始まり】∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
スリランカは、インドの南29kmに位置する島国で、旧国名のセイロンは
紅茶の生産地としてその名を知られています。主要産業は農業(紅茶、ゴム、
ココナツ、米作)と繊維製造業で、シンハラ人(72.9%)、タミル人(18%)、
スリランカ・ムーア人、マレー人など複数の民族により構成されています。
2004年の国連開発計画による「人間開発指数」では、177カ国中96位、
平均寿命72歳、識字率92%、過去5年の経済成長率は毎年5%と、数字の
上では非常に順調な発展を遂げている国と言えます。しかし一方で、シン
ハラ人を中心とする政府とタミル人過激派との間の約20年間にわたる民族
紛争(2002年に停戦合意)に見られる民族間の隔たりは、スリランカ全体
の産業や市民生活に暗い影を落としています。
TEA事業が対象とするプランテーションの農園居住者の生活もまた、ス
リランカにおける民族間の隔たりに起因した多くの問題を抱えています。
プランテーションとは、大規模単一作物生産制度で、スリランカの場合、
各プランテーション農園に労働者とその家族が居住しています。TEA事業
は、標高約2200メートルの山岳地帯に紅茶農園の広がる中央州ヌワラエリ
ヤ県において、プランテーション会社3社が経営する15の農園居住者
約35,000人を対象に実施しています。当初、村のなかったこの地域に19世紀
のイギリス植民地時代に紅茶農園が作られ、労働力として南インドからタ
ミル人が連れて来られたという歴史的経緯があります。現在の農園居住者
の多くは、その当時の労働者たちの子孫で、農園内で生まれ育ち、生涯を
農園内で過ごします。一方、農園経営者の多くはシンハラ人で、この両者
の間には封建的な労使関係が存在し、経営者側の労働者に対する潜在的な
見下しが存在します(このようなシンハラ人を上位、タミル人を下位とみ
なす階級差別は、スリランカ全体に存在するものです)。そのため、農園
経営者は労働者の声に耳を傾けないケースが多く、両者の使用言語も違う
ことから両者間にコミュニケーションが成り立っていないのが現状です。
現地の状況をスリランカ駐在のスタッフ、栗原さんはこう説明します。
「農園居住者は、全国一律の賃金(1日180ルピー=約180円)を得ており、
農園内には学校、病院、託児所などがあり、必要最低限の公共サービスが
整っているので、ある程度の生活を営む保障はあると言えます」生命の
維持さえ困難な状況に置かれる人々もいることを考えると、この事業は
緊急度としてはやや低く見えるかもしれません。栗原さんは次のように
続けます。「しかしそうは言っても、居住者の置かれている生活環境は
劣悪です。植民地時代からの4畳半が2間くらいの住居に5、6人の家
族が住み、女性は早朝から夕方の4時頃までお茶摘みに従事し、男性は
その他の肉体労働に関わります。住居にはトイレがあまりないことから
トイレの使用習慣がないなど、衛生面の問題があります。また、農園居
住者は国民IDを持ってない人が多いので、実質的に移動の自由がありま
せん。また、各個人の住所もないので外部からの郵便や情報が届かない
など、私たち日本人には考えられないような事態がたくさん起こってい
るのです。
それにもかかわらず、居住者たちが経営者側と話し合ってその状況
を打開しようという動きは見られません。経営者と居住者の間に、長
い間続いてきた上下構造があるからです。ですから、まず居住者自身が
置かれている状況を理解すること、そして、農園内の構造そのものを変
えていくことが必要になります。居住者たちの人間としての尊厳を守る
ということは、生命の維持と同様に非常に大切なことなのです」
労働者は農園という外部者は自由に出入りできない閉鎖的な環境に
生活し、お茶摘みの仕事のみならず生活全般にわたるまで経営者に管理
されています。地方行政は農園内にも来なくてはいけないにもかかわら
ず、実質的にはほとんど来ていない状況であり、スリランカ国民の一般
の市民が享受している行政による基本的社会サービスを農園居住者は受
けられません。しかも、どのようなサービスがあるかという情報を入手
する術すら持っていません。このような環境で、農園労働者となる以外
の選択肢は少なく、将来に対する諦めから若年層の未就労者が増えてい
ます。さらには住居や学校・病院・託児所など公共施設が古く不充分な
点、栄養・衛生問題、ストレスが原因と見られるアルコール依存症など、
労働者の劣悪な生活環境と風紀・規律の乱れが問題となっています。
「農園自体は合法的に営まれています。居住者はきちんと自分たちの
収入を得て生活しているし、子どもたちは農園内の正規の学校に通い、
労働に従事することもありません。つまり、搾取や児童労働といった目
に見える問題というものはあまりないのです。しかし実際には、居住者
たちが得る給料の多くがお酒などのために使われてしまっているのが現
状で、アルコール中毒者の問題や、家計管理の問題が残っています。ま
た教育に関しても、農園で行われているのは最低限の教育のみです。
将来、さまざまな可能性を見つけて農園を出て行ってしまうようでは
経営者は困りますから、教育のレベルは低く保たれているのです。農
園内から外へ働きに出ている人もまれにいます。しかし、一般的には
農園で生まれた人は農園内で仕事に従事します」居住者たちの将来の
選択肢は、欠如していると言わざるを得ません。
「ケアがプランテーションの農園居住者の生活に注目するようにな
ったのは、90年代に入ってからのこと。スリランカがイギリスから独
立して以降、国営事業だったプランテーションが民営化されたことや、
内戦が落ち着きを見せ、茶畑への外国人旅行者の訪問が増えたことな
どにより、プランテーションと外部との接触が増えたため、問題も日
の目に当たるようになったのです」NGOがプランテーションの農園で活
動をするというのは、プランテーション農園の多いスリランカでも先
駆的な例のようですが、最近はいろいろな現地NGOや国際NGOが事業を
実施しています。こうして、このプロジェクトは始まりました。
【権利と責任―ケアの活動】∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
ケアではこのような農園居住者の社会生活の改善と、農園コミュニティ
と外部との橋渡しを目標に活動を行っています。具体的には、労働者間、
労働者と経営者、労働者と農園外部とのコミュニケーション体制を構築
すべく、参加型チームを結成し、問題解決力・交渉能力を高めるための
ミーティングとトレーニングを行っています。
「スリランカの識字率は非常に高いので、農園居住者でも比較的、
識字率が高いです。そのため、ミーティングでも文字を使うことができ
ます。多くの途上国では識字率が低く、ミーティングで文字を使うこと
ができませんが、それに比べると、ここでは文字を使うことができる分、
効率的であると言えます。しかし、なかには読み書きが苦手な参加者も
いるので随時フォローしています」
労働者は経営者の管理下で生活しているため、自分で何かをすると
いうことに慣れていず、依存心が強く、それを克服するためのワーク
ショップが活動に盛り込まれています。また、農園は広大であるため、
全住民に事業活動を知ってもらうための情報普及活動や、把握されて
いない住民一人ひとりの基礎情報を収集する活動も行っています。
活動を行っていく過程では、NGOの介入をあまり理解していない農園
経営者側との良好な関係の構築や、労働者の労働時間上の制約上、農園
内での活動時間に制限があるなどの困難もあります。またこの事業は、
成果が目に見えにくく、プロジェクトに参加する農園居住者などのイン
センティブを高めるのが難しい上、プランテーションそのもの、ひいて
は国の構造自体が変革しない限り真の変化は望めないものであり、その
現実を前提とした長期にわたる試みの必要性を居住者に理解してもらう
ことが重要になります。
「現在、生活情報が入手できる場所としてのインフォメーションセンター
を建設中です。このような目に見える成果が生まれることで、居住者た
ちはプロジェクトの意味が実感できるようになり、彼らの参加への意欲
も高まります。以前に比べ、ミーティングへの参加も増えました。しか
し、TEA事業では、成果同様、成果を出すまでの「過程」もとても大事で
す。ミーティングやトレーニングを重ねていく中で、プランテーション
の現状を理解し、農園居住者たちが彼ら自身がもつ「権利」を自覚する
こと、そして、彼らの生活の質を高めるためには、彼ら自身が取り組ん
でいかなければならないのだという「責任」の意識を引き出すこと、能
力を高めていくことが必要ですね」
【プロジェクトマネージャー発TEA事業裏話】∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
ここで、事業とは離れて、プロジェクト・マネージャーである栗原さんの
日常をちょっと覗いてみたいと思います。
「だいたい朝は6時半くらいに起きて、散歩したり朝食をとったりしま
すね。8時半から事務所の仕事が始まります。午前中はメールのやり取りや
デスクワークが主で、事務所にいることが多いです。午後になってから、
ミーティングに参加するために農園に向かいます。日中は、農園居住者た
ちは仕事をしなければならないので、ミーティングは仕事後の夕方になります。
事務所から農園までは四輪駆動車で2時間くらいかかります。夕方、ミー
ティングを終えて事務所に戻ってくるとかなり遅い時間になってしまいます。
また、道は舗装されていないため、車が激しく揺れるので、長時間乗ってい
ると車酔いになってしまう人もいます。私はなぜか平気で、上下に揺れなが
ら本を読んだりしていますけれど(笑)」
「事務所内では日本と違う部分が多くあります。その1つとして、サーバ
ント(男性の雑務スタッフ)がいることです。私はマネージャーという事務
所内では高いポストについているのですが、コピー取りやお茶くみはサーバ
ントの仕事です。私がコピーを取ろうとすると、「コピーはしないでいい」
と言われたこともあります。事務所の中にも小さな階級社会が存在するんで
すね。ただ、私はあまり気にしないほうですが」
ところで、現地スタッフのこんな一面も教えてくれました。
「スリランカ人のスタッフは、朝、出勤してきてから事務所で朝食をとり
ます。始業時間に来て、それから食事をとるのです。しかも、カレーです。
机で食事をしながら仕事するということはしません。手で食べるので、物理
的に難しいのです。だから、ダイニングでちゃんと食事をとります。
食事中にかかってきた電話を取り次ぐこともあまりしません。食事中で
ある旨を伝えると、相手も納得してくれます。誰かに食事を中断させること
は失礼にあたるんですね。最初は私宛ての電話でも、現地スタッフはそのよ
うに対応していて、びっくりしました。今では、私が食事中でも取り次ぐよ
うにスタッフに頼んでいます」
「プランテーション居住者の生活改善事業(TEA事業)」は引き続き、
2006年5月まで実施されます。この期間の中で、農園居住者たちがより主体
的に関わっていくことができるようにしていかなければなりません。栗原さ
んの奮闘はまだまだ続きます。プロジェクトの今後が楽しみです。
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【編集後記】∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
栗原さんは、まじめな話と面白い話が混じったすごい人です。(トリ)
トイレの話は衝撃的でした。「人間の尊厳」新たなキーワードですね。(めぐ)
メルマガ初参加です。これからよろしくお願いします!(さえ)
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