コロナ禍の思春期の女子たちの挑戦
今般、CAREは、コロナ渦の思春期の女子たちに焦点をあてたレポート”Girls-Driven Change –Meeting the needs of adolescent girls during Covid-19 and beyond”を発表しました。思春期の女子たちは、特有のニーズがあるにもかかわらず、支援の対象として見過ごされがちです。このレポートは、そのギャップをうめ、自ら声をあげた女子たちをとりあげています。
ここでは、特に、エクアドルの女子ネットワークの例をご紹介します。
エクアドルの女子ネットワークNational Network for the Defense of Children’s and Adolescents’ Rights教育、児童労働、暴力について提言、国民議会にも影響
女子のリーダーシップおよび参画の実践例の一つが、National Network for the Defense of Children’s and Adolescents’ Rights (以下、RODNNA)です。このネットワークは、2020年6月にエクアドルにおいて、新型コロナウイルスの影響を受けて思春期の女子たちによって設立されました。コロナ禍で子どもや青年のおかれた状況についての、オンラインの国際会議への参画後、女子によって3つのグループが構成されました。彼女たちは、女子にとって、自身の悩みについての相談やアドボカシー(政策提言)への参画が可能になるような場が必要だと声を上げました。そして、次第にRODNNAは、参加者が議論し、悩みを共有し、コミュニティや国といったより広い範囲へ解決策を提言することを可能にする、女子の率いるプラットフォームの構築を目標とするようになりました。RODNNAの設立者らによる、女子の声が的確に伝わらないことや女子の政策提言や計画、意思決定への参加機会の少なさの実感から、ネットワークの設立に至りました。RODNNAの設立者の一人は、「私たち女子の意見は重要視されないのです。それは私たちが単に若いからというわけではなく、女の子だからなのです」と述べました。RODNNAは、設立当時から成長を遂げ、今ではCARE、World Vision、Child FundやUNHCRをはじめとする26の組織から技術支援と研修を受けています。ただ、それらの機関に属する大人たちからの支援を受けているものの、RODNNAは依然として女子たちがリーダーシップをとっています。
RODNNAのメンバーたちは、コロナ禍のエクアドルで思春期の女子たちが受けた影響について、教育を第一に挙げました。それも、特に地方における教育です。移動制限や緩和規制が学校閉鎖を余儀なくさせたことにより、インターネットへのアクセスを持たない女子や、コンピューターを含む電子機器を持たない女子たちはオンライン教育を受けることができませんでした。エクアドルの国内メディアによると、エクアドルの熱帯地域や高原地帯に住む、全40,270人の子どもたちが感染拡大の影響で新学期への登録ができなかったと言います。
また、感染拡大は、女子の国外への移動を増加させ、ひいては児童労働などの危険を伴う労働から子どもを保護する必要性が高まったといいます。その背景には、コロナ禍で家庭が経済危機に陥ったことが挙げられます。RODNNAのメンバーはまた、女子への暴力を重要な課題として説明し、ロックダウンやそれに伴う様々な規制の結果、加害者にあたる人物とともに暮らさなくてはならないという事例があると述べています。感染拡大以前でも女子への暴力は深刻な問題とされており、2019年には15歳から18歳の女子のうち31%が精神的または肉体的な暴力を受け、10%が妊娠中に暴力を受けたと言います。
さらに、特に大きなリスクを抱えるのは、リハビリテーション施設で暮らす女子や拘留中の女子だといいます。これは、彼女たちがコロナ禍で情報や食料、資源へ十分なアクセスを持つことができないことが要因です。RODNNAのメンバーはまた、コロナ禍で早期妊娠のケースが増加し、そのような女子たちは健康支援や他の重要な支援へのアクセスが難しくなっていると言っています。最近のデータによると、10歳から17歳の女子のうち、病院にかかっている者の約8割は妊娠または出産、妊娠中絶のためであり、その地域において病院へのアクセスは緊急課題であるといいます。
以上のような課題に対してRODNNAのメンバーは、コロナ禍で影響を受けたエクアドルの女子たちの状況改善の手助けとなるような解決策の提案に取り組んできました。そこでは何よりもまず、女子の教育へのアクセスを確保するため、コロナ禍で実施が開始された適応力のある手段を与えることが最重要課題とされています。
RODNNAネットワークは、女子への教育に焦点を当てたキャンペーンを開始しました。そして、技術設備や、オンライン教育へ対する教師の能力強化、また女子の参加を可能にするような資源の提供のための政策提言を行っています。RODNNAメンバーは、また、女子に対し、生殖に関するサービスの提供を含めた、最低限の健康管理についての情報を提供することの緊急性を訴えています。また、必要なサービスへの女子によるアクセスの向上のために、携帯電話などの機器を持つことの必要性が強調されています。例えば、RODNNAメンバーは、コロナ禍で女子がどのような影響を受けたかについての追加の情報を求めています。これは、資源の割当を含め、意思決定者が戦略を立てる時の参考にするためなのです。
RODNNAは、長期目標として、国家政策であるNational Code for Children’s and Adolescents’ Protection (子どもと青年の保護のための国家基準)の改善の提案にも取り組んでいるところです。これは、より多くの女子を守るための基準を促進するためです。例として、暴力や性的虐待を防止するため、その原因となり得るような、青年の家庭内労働の禁止が挙げられます。この例は、条例の草案の中に取り込まれ、最初の国民議会で議論されている最中です。
以上のようなRODNNAの活動は、例えコロナ禍であっても、女子がリーダーシップを握る活動は変革的な活動を引き起こすことができるということを示しています。そしてそのような活動は、コロナ収束後においても、国が再構築し回復していく過程を手助けすることができるでしょう。
©︎Juozas Cernius/CARE
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