ベイルート大規模爆発から3か月、支援が届きにくい女性たち
多くの難民を受け入れているレバノンの首都ベイルートでおきた大規模爆発から3か月。女性主導の家庭や障がいを持つ人々、シリア難民、また移民労働者やジェンダーマイノリティなど、弱い立場におかれた人々が高いリスクに直面しています。
2020年8月4日に起きたベイルートの大規模爆発後、爆発地付近に住む女性たちはより一層弱い立場におかれることになりました。これは特に、女性が主導権を握る家庭においてです。CAREは、UNFPA、UN Womenなどとともに、「国際調査:ベイルートの爆発後の緊急ジェンダー分析調査(Rapid Gender Analysis of the August Beirut Port Explosion: An Intersectional Examination、以下RGA)」を発表しました。本調査では、爆発後の経済的混乱によって、ジェンダーに戻づく暴力や物資へのアクセスのリスクが高まったとしています。これらの5つの組織は、周縁に追いやられた人々への支援の強化を求めています。特に、被害を受けた家庭の51%にあたる女性主導の家庭や、12に1つ存在するというひとり暮らしの高齢女性をはじめとした家庭への支援を訴えています。
RGAは、女性や女子、少年やジェンダーマイノリティの人々がこの爆発で受けた影響について評価しています。中でも、国籍や社会経済的背景、法的地位、能力、性的指向を問わず、特に女性が受けた影響に焦点を当てています。本評価では、被害を受けたコミュニティの出身の49人へのインタビュー調査によって一次資料を収集しました。また、レバノン赤十字による17,000以上の世帯を対象とした調査を含む、45の既存の報告書および評価をもとに分析を行いました。
女性や女子がベイルート大規模爆発によって受けた影響について、以下のことがわかっています。
・弱い立場におかれた女性のうち、51%は家庭の主導権を握っており、8%はひとり暮らしの高齢女性にあたります。
・家や避難所の崩壊は、住居だけでなくアイデンティティや安全な場所を失ったことによって、ジェンダーに基づく暴力や精神衛生を悪化させています。
・女性や周縁に追いやられた人々は、特に応急処置をはじめとした健康サービスの必要性に急を要しています。また同時に、女性への差別や虐待およびハラスメントへの恐怖は、公正な人道支援の受け取りを思いとどませてしまうこともあります。
・爆発によって生殖に関わる健康サービスへのアクセスの機会が減少し、妊婦や授乳期の女性の40%は、乳児や母親への支援を必要としています。
・失望や絶望、怒り、苛立ちや動揺、不安は性別や社会的地位、年齢などを問わず、急激に増加しています。
「ベイルートの人々は大規模爆発によって、多くのものを喪失しました。50万人以上の人々が職を失ったことに加え、新型コロナウイルスの影響で、この危機は現存する経済危機の中でも上位にのぼるでしょう。性やジェンダーに基づく暴力には様々な形態がありますが、それらのリスクは爆発後に高まりました。特に、女性主導の家庭や障がいを持つ人々、シリア難民、また移民労働者やジェンダーマイノリティなど弱い立場におかれた人々が高いリスクに直面しています。彼らは、政府による強力な対応がないことで保護や援助を必要とし、支援に大いに依存しています。このような佳境において、援助団体がこれらの弱い立場におかれた人々への支援を続けることが最重要視されるべきです」と、CARE レバノンの事務局長Bujar Hoxhaは訴えます。
加えて、報告書では、多くの女性が雇用機会を失いつつあることを警告しています。このような事態には、爆発地付近において女性の率いるビジネスの約5分の1が喪失してしまったこと、再建・復興の過程で経済活動の機会から阻害されてしまうことが関連しています。特に失業に直面しているのは、移民女性の中でも家事労働をしている者です。彼女たちの多くは、爆発の前後のどこかの時点で解雇されているのです。
RGAでは、実際に訪れることが難しい人々のために、健康サービスが無料で、そして自宅で支給されることを懇願しています。また、人道支援者やボランティアたちが、性に基づく暴力や性的搾取、虐待に対して対応できるよう、基本的な規約や原則に基づいて訓練されることを奨励しています。
©︎Juozas Cernius/CARE
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