生きるチカラを信じて支える ケア・インターナショナル ジャパンは、貧困の根源の解決に向け、災害時の人道支援を行うとともに、「女性や子ども」に焦点をあてた活動を通して、最も困難な状況になる人々の自立を支援しています。

レソト:センク川渓谷における干ばつ被災者の栄養改善事業

事業部 貝原塚 二葉

期間
2008年4月~2008年10月
*レソトにおいては、今後も長期にわたる支援プロジェクトを実施予定です。
地域
レソト 南部センク川渓谷東側3県(モハレス・クーク県の一部、クティング県の一部、クゥアチャズ・ネック県)
対象者
センク川渓谷東部で最も脆弱な子どもと女性約3,750人(750世帯)
連携機関
政府諸機関、国際機関、現地NGO
ドナー
(特活)ジャパン・プラットフォーム、ケア・フレンズ岡山(山陽放送株式会社)、一般寄付
事業規模
約5,000万円
菜園

菜園には円形菜園と地表型菜園があり、写真は円形菜園の様子

南アフリカ共和国(以下、南ア)に周囲を360度囲まれた国、レソト王国。この国は、2006年~2007年にかけて、過去30年間で最悪の干ばつに見舞われました。この干ばつにより、レソト国内で生産される主要作物であるメイズ(白とうもろこし)などの農作物の出来高は激減しました。また、一部隣国である南アからの輸入に頼っていたものの、世界規模の気候変動や食糧価格高騰などの影響により、レソトの人々の置かれた状況は非常に深刻でした。手に入る作物が不足し、特にエイズ感染者や孤児など影響を受けやすい人々の栄養状態が悪化しました。

そこで、ケア・インターナショナル ジャパンは、(特活)ジャパン・プラットフォームの助成金を受け、2008年4月よりセンク川渓谷東側において干ばつ被災者に対する支援を開始しました。山岳地帯の多いレソト国内においても、センク川渓谷周辺は特にアクセスが悪いなどの理由から、支援が十分に届いていない地域でした。この事業では、主に以下の活動を行いました。

・女性や子どもが中心である世帯、HIV陽性者およびエイズ患者を抱える世帯、特に貧しい世帯などを対象に、栄養改善のための家庭菜園設置の支援
・家庭菜園設置のためのボランティアの農業普及員の研修
・家庭菜園設置のための道具と種子の配布
・家庭における子どもの栄養状況の把握と栄養に関する知識向上を目的としたボランティアのコミュニティ・ヘルス・ワーカーに対する研修

菜園を取り囲んで、モニタリングの方法を学ぶ村人
菜園を取り囲んで、モニタリングの方法を学ぶ村人
コミュニティにおけるミーティングで、支援する対象世帯を選定するため、真剣な表情で話し合う村人たち
コミュニティにおけるミーティングで、支援する対象世帯を選定するため、真剣な表情で話し合う村人たち
家庭菜園を通じた栄養改善 ~円形菜園と地表型菜園の設置と野菜栽
野菜を購入することが難しい貧困家庭において、家庭菜園(円形菜園あるいは地表型菜園)を作り、作物を栽培して、必要な栄養を摂取することができるよう、支援を行いました。家庭菜園の設置にあたっては、すべてCAREからの支援に頼るのではなく、準備から実施までコミュニティが主体となった協議に基づく形で行われました。石や土壌の確保など菜園設置に必要な資材の準備にも、コミュニティが主体的に関わりました。

まず、支援対象地域である11コミュニティでは農業普及員(合計22名 男性:13名、女性:9名)が選出されました。菜園設置にあたっては、研修を受けた農業普及員がCAREの技術指導を受けながら、村人に対して家庭菜園や点滴灌漑キット(チューブ付き水タンク)設置のデモンストレーションを実施し、さらに各家庭におけるフォローアップも行いました。孤児のみで暮らしている世帯がデモンストレーションに参加しやすくするために、学校においてもデモンストレーションが行われました。参加者たちはとても積極的に学び、熱心に作物を育てようとする姿が見られました。この事業の支援対象者でない村人たちの中にも、デモンストレーションに自主的に参加し、自ら家庭菜園を設置して活用する人々もおり、村人たちの家庭菜園に対する高い関心がうかがわれました。  

事業終了時までに、活動対象地域11コミュニティ756世帯において、円形菜園が合計1,000個、地表型菜園が合計1,340個、設置されました。また、菜園設置に必要な道具と5種類の野菜の種子(ほうれん草、にんじん、トマト、かぶ、ビートルート)および点滴灌漑キット778セットを配布しました。

コミュニティ・ヘルス・ワーカーに対する栄養改善研修
レソトでは、各村に主に女性から構成されるボランティアのコミュニティ・ヘルス・ワーカーがおり、村人の健康相談への対応、5歳児以下の体重・身長測定、治療が必要な村人に対する最寄りの医療機関の紹介や輸送支援などの活動を行っています。しかし、政府はコミュニティ・ヘルス・ワーカーの能力向上を目的とした研修などを行っておらず、ヘルス・ワーカーたちの能力にもばらつきがあり、村人の健康状態などについて正確に把握されていない状況でした。コミュニティ・ヘルス・ワーカーとクリニックとの連携も弱く、必要に応じた措置がとられていないなどの問題が生じていました。

ボランティアのコミュニティ・ヘルス・ワーカーを対象とした研修風景
ボランティアのコミュニティ・ヘルス・ワーカーを対象とした研修風景
研修で子どもの体重を測定するための器具の使い方を学ぶコミュニティ・ヘルス・ワーカーたち
研修で子どもの体重を測定するための器具の使い方を学ぶコミュニティ・ヘルス・ワーカーたち
そこで、コミュニティ・ヘルス・ワーカーが子どもの栄養状態を正しく把握し、村人を対象とした栄養に関する講習会や家庭訪問の際に適切な栄養指導を行うことができるよう、ヘルス・ワーカーの能力向上のための研修を実施しました。ヘルス・ワーカーたちのレベルにあった現地語(ソト語)の研修用教材が乏しかったため、(特活) シェア=国際保健協力市民の会の協力で派遣された日本人栄養専門家のアドバイスを得ながら、既存の研修内容の改定を進めました。

研修やその後のフォローアップの結果、ヘルス・ワーカーたちは、きちんと乳幼児の身長や体重を測ったり、記録をつけることができるようになりました。 また、5歳児以下測定や村での集会、クリニックや病院での妊婦を対象とした母親健診などで、研修を受けたコミュニティ・ヘルス・ワーカーによる栄養や健康に関する講習会が実施されるようになり、主に母親たちが栄養についての知識を得るよい機会となりました。講習会のトピックは、妊産婦の高栄養摂取の重要性、乳幼児の食事、栄養失調にかかる5つの原因、乳幼児がどのような症状を発症した際にクリニックに連れて行くべきかなど11のトピックがあり、毎回、1トピックずつ取り上げられました。また、研修を受講したコミュニティ・ヘルス・ワーカーが所属するクリニックや病院では、改定された現地語の研修教材を使って彼らが自主学習を行うようになりました。以前は、きちんとした研修がなく、このような取り組みがほとんど行われていなかったことを考えると大きな前進です。この活動を通して、活動対象地域11コミュニティ69村から35名のコミュニティ・ヘルス・ワーカーが研修を受けることができました。  

この事業の対象地域であるセンク川渓谷は、各村、各コミュニティへのアクセスの悪さから、なかなか支援が届かなかった地域でしたが、地域住民の積極的な参加が得られたことで、7カ月という短期間にもかかわらず、ある程度の成果を得ることができたと思います。しかし、この事業で支援した家庭菜園の普及・定着やコミュニティ・ヘルス・ワーカーのさらなる能力向上は長期的に取り組むべき課題です。現在、CAREレソトの現地スタッフにより、その後のフォローアップが行われています。ケア・インターナショナル ジャパンでは、今後、さらにこの事業の成果を確実にするための後続事業を実施する計画です。



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