生きるチカラを信じて支える ケア・インターナショナル ジャパンは、貧困の根源の解決に向け、災害時の人道支援を行うとともに、「女性や子ども」に焦点をあてた活動を通して、最も困難な状況になる人々の自立を支援しています。

タイ:移動教育事業

事業部 犬飼 裕子

期間
2003年1月~2005年12月(3年間)
地域
タイ ウボンラチャタニ県(東北部)のラオス国境に近い4郡
対象者
小中学校20校の小中学生、教師、青年ボランティア、村人など
関係者
地区教育局、地区行政オフィス、保健センター、科学教育センター、NGOなど
ドナー
ケア・フレンズ東京 (1-3年間)、ケア・フレンズ岡山 (3年目)
事業規模
850万円(3年間)
移動教育事業

タイでは、1960年代からの急速な経済開発の結果、中央と地方、都市と農村の格差が広がり、この格差は教育にも現れています。教育事情の悪さが貧困とからみあい、子どもたちの学習意欲や学力不足などの問題が生じています。また、教師から生徒へのトップダウン方式、読み書き中心の伝統的な教授法により、子どもたちが積極的に発言したり、自ら考え、課題に取り組む姿勢が育ちにくい状況にあります。

移動教育事業は、東北タイのウボンラチャタニ県の中でもラオス国境に近い小・中学校20校の生徒、延べ3,000人を対象に実施しました。子どもたちが自ら問題解決できる力を身につけることを目的として、図書や教材を積んだ移動教育車を巡回させ、教師、青年ボランティア、村人との協力のもとに、子どもが主体となった総合的な学習活動を行いました。

 

この事業は、ケア フレンズ・東京の5周年記念事業として、2003年1月から3年の計画で始まり、2005年12月に終了しました。ご支援いただいた関係者の皆様に心よりお礼申し上げます。ここで、この事業の3年間の活動について振り返り、終了報告をさせていただきます。

活動の展開

ウボンラチャタニ県

学校における活動は、対象校20校の生徒に対して、環境、健康、科学、美術など身近な事柄をテーマにした総合的な課外学習と読書を取り入れて実施しました。また、特に高学年を対象に、村の課題を話し合い、問題解決に向けたマッピング活動(村探索、村地図作成、課題調査、結果の発表)を導入しました。2年間の活動を終えた時点で、地域や学校ごとの取り組みに大きな差が見られたため、3年目は、モデル7学校を選定し、そこを拠点にして活動の成果が効果的に広がるようにしました。

その結果、各学校で、村における樹木の伐採問題をテーマにした人形劇の創作や、読んだ本を紹介する放送活動、村人から伝統手工芸の技術を習得して制作する活動など、それぞれの学校や土地に合った発展的な活動が考案され、実施されました。また、全校において、学校図書の貸し出しシステムを整備して新しい図書を購入すると同時に、読書感想文や手作り絵本の創作などの活動も導入されました。

一方、コミュニティにおいては、4箇所のモデル・コミュニティにボランティア宅を開放して図書室を設置し、子どもや村人に読書の機会を提供しました。また、調理実習や読書促進活動がボランティアにより企画され、実施されました。最終年度には、学校で行われてきたマッピング活動の延長として、子ども、教師、村人が集まり、村の課題について話し合う機会を設けました。参加者は、村の過去から現在を振り返ってその変化を再認識し、将来あるべき姿に近づけるための活動計画を考えました。そして、収入確保のための養殖魚・有機肥料作りや環境改善のためのゴミ箱・焼却炉の設置などの具体的な活動が実施されました。

成果と課題

事業終了にあたり、事業の評価活動を行いました。学校(教師)、コミュニティ(村人)、子どもたちのそれぞれについて評価項目を設定し、現地の教育コンサルタントと事業担当者で学校訪問、インタビュー、教育イベントの観察などを実施し、調査を行いました。そして、ケア・インターナショナル ジャパンと現地事務所の教育チームで調査結果について検証し、この3年間の活動についての評価を行いました。成果としては以下の点が挙げられます。

・3年間の活動を通して、子どもたちの創造性が発揮され、自ら課題について考え、解答を導き出そうとする探究心が見られるようになった。さらに、コミュニティの課題に関する関心、参画意識、行動力の向上も見られ、友だちと協力して活動する能力も高まった。

・子どもたちを取り巻く環境の変化が見られた。教師たちは、子どもを中心とした参加型教授法のトレーニングを受け、教科に図書を使った調査活動やグループ活動を取り入れるなど、子どもたちが参画する授業を展開するようになった。

・青年ボランティアたちは、ファシリテーション・スキルなどのトレーニングを受け、将来の村のリーダーとして必要なことを身につけた。

・村人たちは、子どもたちの活動に一層理解を示して協力するようになり、子どもの力を一人前に見ようという意識の変化が見られた。また、コミュニティと学校との連携が促進された。

上記のような成果が見られた反面、学校における子ども主体の活動が一部の教師の主導で行われていること、コミュニティにおいて子どもが参加できる活動プログラムがまだ少ないこと、青年ボランティアが進学や就職で村を離れ、活動の継続が困難になるなどの課題が挙げられました。

そしてこれから...

これまでの活動を通して、コミュニティに継承されてきた知恵や技能が豊富にあり、村人が協力的であることがわかりました。子どもたちが主体的に考え、判断し、行動する力を引き出して、自ら問題解決するための「生きる力」を身につけるには、これらの豊かな資源を生かし、コミュニティの人々が一体となった息の長い活動を続けることが重要です。ケア・インターナショナル ジャパンのタイにおける事業は終了しましたが、今後は、現地事務所が課題の解決に向けて活動を発展させ、継続していく計画です。

~活動に参加した学校教師とのインタビューから~

「グループ作業で、村の支出状況についてマッピング活動により分析し、村世帯のサンプル調査を行った。その結果を分析し、貧困である原因と支出を削減する方法について検討。資源の再利用、共同利用、自給などの解決策を提案し、養殖魚、有機肥料作りや植樹などの活動を実践した。子どもたちには、積極的に発表する、グループ作業ができる、発想を広げられるなどの変化が見られた」
(バクチュム小学校教師・モデル校)
課題についての調査結果をまとめたチャート

課題についての調査結果をまとめたチャート

「教師トレーニングに小学校高学年・中学生が共に参加したことから、子どもたちの発案で人形劇のクラブ活動が始まった。樹木の伐採問題をテーマにした人形劇を自作・自演し、タイの新聞、雑誌やTVで紹介された。また、活動をきっかけに、村人が学校に来て話をするようになり、教師は教科の枠をはずした総合的な授業を実施するようになった。活発に発表するようになった子どもとあまり変化がみられない子どもが見られるが、家庭環境に問題があるので、そういう子どもに対しては家庭訪問を行っていきたい」
(ファイサイ小中学校教師・モデル校)
村における樹木の伐採問題をテーマに創作した人形劇

村における樹木の伐採問題をテーマに創作した人形劇

「コミュニティに伝わる手工芸について、制作に必要な道具や資源、制作過程、効能などについてマッピング活動を行って調べ、まとめた。親や村人から技能を学び、実際に制作して、小遣いを獲得した子どももいる。約1年半をかけて、初期のビリッジマッピングからここまでの活動に発展させた。子どもたちの発想が、A→Bであったのが、A→A'→B→B'と広がり、大多数の子どもたちがより自由な発想ができるようになった」
(クムセンチャニー小学校教師・非モデル校)
村人から伝統手工芸の技能を習得して、かごやマットなどを制作

村人から伝統手工芸の技能を習得して、かごやマットなどを制作

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