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東日本大震災ブログ

在宅被災者の支援について考える(その1)[木村雅子のブログ]

[ 2011.11.14 ]

被災地で支援の手が届きにくい層の一つとして、在宅被災世帯の方々が挙げられます。
被害が余りにも甚大、広範に及ぶ今回のような災害では、文字通りライフ・ラインを繋ぐことが急務である時期においても、自宅で避難する被災者の所在を一戸一戸確認し個別に対応していくのはとても難しいことです。安全な水、食糧、電気、医薬品、防寒具、あらゆるものが他の被災者と同じように不足し困窮する状態にありながら、在宅被災者には十分な支援の手が届きませんでした。そしてその状況は、震災発生から時間が経過していくにつれ、益々顕著になっていきました。支援物資の配布や炊き出し、生活環境調査や専門家によるアドバイスなど、外部からの支援が基本的に避難所をベースに行われたためです。支援に線引きはありませんが、例え避難所で支援物資が余っていても"寝る場所があるだけ恵まれている"という引け目から、在宅被災者は配給の列に加わりにくいというような見えない壁もあったようです。

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取り壊しを希望する家屋には、
壁に赤い文字で印がつけられている。

さりとて、その自宅も決して安全な状態とは言えず、家屋を補修しようにも義援金受給の見通しはなかなか立たず(注1)、行政の防災計画に在宅被災者への対応項目もなく、日本赤十字社の家電製品6点セットも配布対象が仮設住宅のみに限られ、震災発生から長期にわたって続く在宅被災者の孤立無援の状態は被災地でも問題視され始め、"被災差別"という言葉が生まれたほどでした。
震災発生直後から日々、現地でこうした状況を目の当たりにしてきたCAREのスタッフも、対応策を思考し、これまでに「半壊」家屋に避難する世帯を対象とした食糧配給、「商品券」の発行、「カタログ家電支援」といった活動を行ってきました。
そのうちの一つ、山田町で行った商品券の発行について、実施の詳細と結果を紹介します。

本支援活動は、山田町役場、商業事業協同組合と商工会、そしてCAREの協働で実施されました。対象者は、山田町で家屋半壊認定を受けた147世帯、支援の内容は、各世帯に山田町内の42店舗で使用できる商品券2万円分(1,000円の商品券×20枚)を配布するというものです。商品券の配布は7月初旬から開始し、有効期限は配布当初、8月末までの設定としました。現金の支給でなく敢えて利用店舗を限定した商品券としたのは、支援がパチンコなど別の目的で消費されることを防止するためであり、また、山田町の商業支援も視野に入れたことによります。
震災で孤立無援の状況に陥ったのは個人事業主も同様でした。生活再建の基盤となる生業の確立や経済活動の振興促進は被災地における急務の一つであり、行政も個人事業主に対して事業の早期再開を要請していました。しかし店舗の損壊に対する義援金の支給は無く(注2)、行政の街作り計画も遅々として定まらないことから、小売商店などの再建は今もって尚、なかなか進まないのが現状です。今回の支援では、自力で再出店までこぎつけた山田町内の小売商店を商品券加盟店とし、売上げ促進効果を期待しました。
半壊家屋世帯の支援を行おうとする際、最も大きなハードルとなるのが被災者情報の収集です。半壊家屋に居住する被災者がどこに、どのくらい存在するのか、漏れなく独自に情報収集することは困難を極めます。確実な情報としては、行政機関が所有する「半壊」認定リスト=罹災証明者リストが考えられますが、個人情報が含まれるため私たちのような民間支援団体が入手することはできません。そこで今回の活動では、支援内容の周知、商品券の配布など、支援対象世帯との連絡窓口を全て役場に一任することでその問題をクリアしました。
商店側の情報収集や協力店舗への周知、商品券の現金化などは、商業事業協同組合と商工会の協力を得て一任し、CAREが資金提供と商品券作成作業を担当する。本支援は、山田町の行政分野、商業分野とCAREとの三つ巴の構図で初めて実現できたものです。

商品券の配布からおよそ1か月後の7月末、中間リサーチが行われました。結果、その時点での利用率はわずか17%に留まっていました。その理由としては、①被災世帯への商品券到着にばらつきがあったこと(到着が遅れた世帯があった)、②有効期限や使い方など、利用方法の認識が徹底していない可能性があること、③お盆に合わせた使用が見込まれている可能性があること、という3点が考えられました。これらの可能性を踏まえて、"活用のし損ね"を防ぐため、中途段階で有効期限の1ヵ月延長を決定し、改めて利用方法の周知徹底を図るため協力店舗にポスターの掲示を行いました。

そして有効期限の9月末を過ぎ、再度集計を行いました。その結果、最終的な利用世帯率は147世帯中140世帯の、93.3%に上り、利用世帯中の87.1%が配布した20枚全てを使い切っていました。用途は、その93%が食料品に充てられており、残り7%は医薬品、家電、寝具、書籍、衣料品など多岐に亘るものでした。利用の時期はおよそ68%が8月で、中でもお盆の前週に利用が集中していました。店舗については、地元のスーパーマーケットに7割近くが集中していました。

山田町で行った今回の活動は、殆どの対象者に利用してもらえたという点では有益な支援として受け止められたものと考えます。同時に以下の点が、今後の活動における教訓として抽出されました。
一つ目は、商業活動の促進支援に関する点です。今回、利用店舗は1店に集中し、加盟店全体の幅広い活用を促すという目論見は外れました。今後、同様の活動を行う場合は、仕組みに何らかの工夫を加えていく必要があると考えます。
「商業支援」と「消費者支援」のどちらを優先させるかで、活動の設計も変わってきます。対象店舗の想定も然りですが、活動時期についても、「商業支援」の観点からは消費の落ち込む時期に実施し、「消費者支援」の観点からはお盆などの購買ピーク時に実施することが効果的であることが、今回の活動結果から改めて明らかになりました。
更にもう一点、運営面において、商工会の負担が重くなったことが反省点として挙げられました。各店舗から持ち込まれる商品券のチェックや現金化などは全て、商工会に一任していましたが、細かく煩雑な事務手続きが多く、人的投入、もしくは人件費の投入なども考慮する必要があったと考えます。

損壊した建物の3階に臨時店舗を設け、営業を続けるヘアーサロン.JPG

損壊した建物の3階に臨時店舗を設け、
営業を続けるヘアーサロン。

在宅避難世帯への支援活動については、避難所や仮設住宅に対する活動とはまた違った意味での検討や工夫が必要とされます。今回のような商品券での支援は手間とコストがかかる分、費用対効果が薄くなるという意見もありました。避難所や仮設住宅に支援を集中させる方が効率的であるという意見もあります。しかし本活動の担当者は、「東日本大震災に対する援助の場合、一番困っている人を助けるのが重要で、むしろ、援助効率を考えてはいけないのではないか」、と外部団体のインタビューに対し答えています。
CAREの東北支援活動は今後もまだ続いていきますが、一つ一つの活動において思考を重ね、外部の方のご意見にも耳を傾け、経験知を活かしながら、また次の支援に繋いでいきたいと考えます。

(注1) 家屋の「半壊」認定者を含む被災者への義援金および生活再建支援制度、第一次交付に対する申請受付は、宮古市4月27日、釜石市5月2日、大槌町5月9日、山田町6月3日から、地区ごとに順次開始された。受給までの所要期間見込みは1~2カ月とされていた。
(注2)山田町では養殖業などの個人事業主が多いことを考慮し、事業に使用する建物に対しても住宅同様、損壊の程度に応じた義援金の支給を決定。9月12日から受け付けが開始された。

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Tel: 03-5950-1335 広報担当

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