コロナ禍にあるNGO職員、父親、夫として
*ウォルター・マウェレは、ジンバブエ出身で、CAREソマリア事務所においてアドボカシー・広報担当として働いています。
CAREでの新しい仕事や、ソマリアで直面するであろう様々な問題に緊張と興奮を感じながらモハメド・アブシル空港に降り立ちました。しかし3時間後、予期せぬ事態が発生しました。荷解きをしている際中に、上司が明日、帰国するように伝えてきたのです。ソマリアで最初の新型コロナウイルス感染者が確認され、無期限に空港を閉鎖することが決められたからです。
上司は、この閉鎖は数週間で終わるだろうといいましたが、実際には6か月にも及ぶ在宅ワークとオンライン会議の始まりでした。
2人の愛娘と妻、そして両親の住むジンバブエの自宅に帰ってきましたが、ジンバブエではまだ1人もコロナウイルス感染者が出ていませんでした。地元の知り合いには、新型コロナウイルスの影響で帰国したことに驚かれ、アフリカは暑いからウイルスなんて存在しないと新型コロナウイルス自体全く懸念されていませんでした。家族と過ごせることは嬉しかったのですが、同時に、ソマリアからウイルスを連れ帰って家族にうつしてしまうかもしれないと不安を感じていました。
そんな中、ソマリアの感染者数が急上昇し、CAREの事業もコロナ禍の状況に対応して進められていきました。ジンバブエでもすぐに最初の感染者が確認され、都市が封鎖されました。家から出ず、新型コロナウイルスに関する情報に左右される生活にも慣れてはや6か月、私はソマリアに再び移ることになりました。自身が最もやりがいを感じることのできる、脆弱で最もコロナ禍の影響を受けた人々のニーズを伝える仕事をするために、私はCAREのオフィスに戻りました。そこで私はある若い女性の悲しい話を聞きました。
彼女は新型コロナウイルスに感染しましたが、医療サポートを受けることができず、家からも10日間いっさい出ることができませんでした。なぜなら、近隣の人々が彼女に近づきたくなく、さらに、彼女に治療を受けることを許さなかったからです。そして不運にも、彼女は命を落としてしまいました。実際、彼女以外にも同じような状況に直面し、近隣地域から逃げる人が多くいます。
ソマリア着任から3週間後、私が最も恐れていたことが起こりました。新型コロナウイルス陽性と診断されたのです。陽性となり、さらに家族と離れて暮らすことはとてもしんどかったです。しかし、私は、部屋に隔離されながらも、仕事を続けることに決めました。また、結果は陽性でしたが無症状だったので、妻だけに陽性であることを知らせ、両親にはいわないように頼みました。
新型コロナウイルスのパンデミックは、世界とソマリアに壊滅的な影響を及ぼしています。何百万人もの命が失われ、さらに多くの人が寝たきりになり、病院はその影響を大きく受けています。友人との付き合いや家を出ることが生死の決断になっています。働き方にも大きな影響を与えました。同僚とコーヒーを飲むなど、当たり前のことは今では遠い記憶に過ぎません。私たちは物事が正常に戻るだろうと希望を持つしかありません。しかし、今まで通りの生活に戻るのは、来月や今年中ではなく、いつか分からないある日かもしれません。
私は、この非常な年を通して、今こそ世界が1つに団結すべき時であると今まで以上に気がつきました。今は、政治や官僚機構について低劣な議論をしている場合ではありません。ワクチンは、裕福な国、貧しい国、先進国または途上国、これらすべての国々に届かなければいけないのです。
誰もがこの致命的なウイルスから守られるまで、世界は安全ではありません。今やこれまで以上に、女子と女性はパンデミックの波及効果から保護される必要があります。そして、特権を持っている人と持っていない人の間の格差を広げないように注意する必要があります。例えば、パンデミック中もすべての子どもたちが教育を継続できているのでしょうか。あるいは、上流階級だけに提供しているのでしょうか。
ウイルスがなくなった後、世界がどのようになるのかはわかりません。しかし、お金持ちがすべてのワクチンを接種したために、他のいわゆる貧しい国にワクチンを届けることができなかったと嘆くつもりでしょうか。インターネットがなかったために教育を受けられなかった子どもたちを守ることができなかったと悔やむのでしょうか。家族がこのパンデミックを乗り切るためにお金が必要だからと女の子を結婚させている、そんな現状を阻止するために十分なことをしているのでしょうか。
今こそ、地元の言葉でいう「ウブントゥ(他者への思いやり)」を示す時です。隣の人、地域、国、大陸を守りましょう。そうすれば、私たち全員が安全で、目に見えない敵を倒すことができます!
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■新型コロナウイルス感染症緊急支援事業
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