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女性は、教育、就業や結婚など、様々な機会で平等に扱われていません。問題の解決には、男性の参画も必要との考えのもと、男性も巻き込みつつ、ジェンダー平等に取り組んでいます。
教室と女子に配慮したトイレの改修を通じて、子どもたちが安心して、質の高い学習ができる環境を実現する
▲教室不足のため、未完成のまま使われている校舎
スルケット郡ビレンドラナガルの最も人里離れた場所にあるネパール・ラストリア校。1979年に設立された同校は、バルディヤ国立公園の緩衝地帯に位置しています。この学校には、5歳~16歳の1年生から12年生までの合計362人の生徒が在籍しており、そのうち82人(22%)が社会から疎外されたダリットや先住民のコミュニティに属しています。市内の1区内で唯一の学校であるため、大半の生徒は2時間かけて通学しています。
ネパール・ラストリヤ校は、主にインフラの不足のため、PMECs*の指標を満たすのに苦慮しています。同校には14の部屋からなる7つの校舎がありますが、そのうち2つは安全ではないため使われていません。また、部屋数が不足しているため、2つの異なる学年の生徒が、多学年方式によって同じ教室で授業を受けています。 同校は過去に2つの教室からなる校舎の建設に着手したものの(土台と屋根は完成)、資源不足のため未完成のままです。その結果、生徒たちは壁のない教室で勉強せざるを得ない状況にあります。その上、学校のトイレには貯水タンクがないため、水道が通っていません。学校の集散地には生理用ナプキンの処理場が建設されているものの、女子に配慮したトイレはありません。長期的に見て、このことが多くの女子が退学する理由の一つとなっています。
*PMECsとは、質の高い学習環境を実現するための以下の1~5の前提条件または基本的条件を指します。
1.適切な教室、2.適切な生徒と教師の比率、 3.無料の教科書の適時提供、4.女子用トイレ、5.図書館
これらPMECs基準を満たすことができていない状況を踏まえ、ネパール・ラストリヤ中学校は、良好な学習環境のための外壁の建設、水と衛生設備の改修、そして全ての生徒を収容できる施設の建設といった緊急支援を必要としています。
活動地域 | ネパール 北西部 カルナリ州 スルケット郡ビレンドナラガル |
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実施期間 | 2023年8月1日~2024年6月30日 |
対象者 | 全校生徒 362人(男子 173人、女子 189人、事業開始時点) |
ドナー | 株式会社えがおホールディングス |
事業規模 | 1,300千円 |
事業目標 | 教室と女子に配慮したトイレの改修を通じて、子どもたちが安心して、質の高い学習ができる環境の実現を目指します。 |
未完成校舎の教室の改修
多学年教室から各学年の教室に分けるための壁や床工事を実施し、生徒の学習や学習成果の向上に役立つ書籍や教材を備えた図書館を開設することにより、男女の区別なく、質の高い教育を受けられる環境をつくります。
水と衛生設備の改修と維持管理
貯水タンクと生徒用の手洗い場を設置するとともに、手洗いの6つの手順のデモンストレーションを行います。また、生理用ナプキンを処理する設備を備え女子に配慮した優しいトイレを設置することにより、特に女子生徒が月経中でも通学できる環境を整えます。
意識向上
ー月経衛生対処を含む安全な衛生習慣に関する教師と生徒への研修の実施
思春期にある男女生徒に対しリプロダクティブ・ヘルスと月経期における衛生管理についての研修を実施します。また、女子生徒を対象に、再利用可能な生理用ナプキン(布ナプキン)と安全な衛生習慣に関する研修を行います。また、女子に対する暴力や差別を含め、月経にまつわる社会的慣習や古い言い伝えを変えるための、水と衛生、月経衛生管理に焦点を当てた課外活動を実施し、意識向上を図ります。さらに、新採用の教師に対し、知識とスキルの習得のための教員用研修を実施するとともに、養護教諭に対し、学校における栄養知識や、リプロダクティブ・ヘルスを含む思春期に配慮した保健サービスに関する能力開発を行います。
▲倒壊の危険性があるため使用されていない第一校舎(左)と同じく古くなって使用されていない第二校舎(右)
▲倒壊の危険性があるため使用されていない第一校舎(上)と同じく古くなって使用されていない第二校舎(下)
生理中の女性や女子を隔離するヒンドゥー教の慣習「チャウパディ」
▲ネパール西部の「生理小屋」
ヒンドゥー教を信じる一部の地域では、生理は不浄なものとされ、生理中の女性や女子にはさまざまな制限があります。その一つが家の母屋からの隔離です。牛小屋などへの隔離は違法であるものの、本事業を行っている地域では、現地メディア*によると、いまだに91パーセントの女性や女子が生理中に何らかの制限を受けています。感染症、蛇にかまれる、一酸化炭素中毒、凍死などによって、いわゆる「生理小屋」で命を失う女性の数は少なくないのが現状です。
*2023年1月7日付け英字ニュース「ザ・ライジング・ネパール」
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