タイ徒然記|クレン・チャイ ー思いやりの仮面をつける子どもたち

「クレン・チャイ」(เกรงใจ)は、しばしば「他者への配慮」と説明されますが、タイ社会においては、それ以上の深い意味を持っています。それは、他人の気持ちを傷つけたり、迷惑をかけたり、対立を引き起こしたりすることを避けたいという願いです。多くの点で、クレン・チャイは美しいもので、社会に優しさ、忍耐、そして調和をもたらします。
一方で、クレン・チャイが度を越すと、それは仮面となってしまいます。多くの子どもたちは、「いい子」であり、礼儀正しいと見られるために、黙り込み、感情を隠し、自分の意見をいわないようにと教えられて育ちます。特に移民の子どもたちにとって、この沈黙はさらに強いものになりがちです。
タイで移民の子どもたちと関わるなかで、私たちはこの感情を、より強く目の当たりにすることがよくあります。多くの子どもたちは、授業が理解できないとき、不安を感じるとき、あるいは不当な扱いを受けているときでさえ、黙り込んでしまいます。子どもたちは社会的弱者という立場にあるため、あらゆることを黙って耐え忍ばなければならないと感じてしまうのです。
クレン・チャイは子どもたちに他者への優しさを教えるべきものですが、決して自分の声や安全、権利を放棄するよう教えるものであってはなりません。私たちがすべての子どもに学んでほしいと願うことは単純です。他者を思いやることは大切ですが、自分の気持ちや安全も同様に大切だということです。

すべての子どもには、安全を感じ、自分の声が聞き入れられ、尊重される権利があります。他方で、一部の子どもたちにとって、自分の気持ちを伝えることは必ずしも容易ではありません。だからこそ、安全な空間を作ることが非常に重要なのです。安全な空間とは、単なる物理的な環境にとどまりません。それは、子どもたちが自分の声が大切にされていると実感できる場所であり、恐れずに質問ができ、批判されることなく不安を打ち明けられ、必要な時に支援を求めることができる場所なのです。子どもたちが自分の話を聞いてもらえていると感じ、尊重されていると感じれば、積極的に参加し、自分の意見を述べ、自信を育むことができるようになります。
児童保護の根底にあるのは、シンプルなメッセージです。「すべての子どもには、自分の声を聞いてもらう権利がある」ということです。私たちは決して、子どもたちに自分の声や安全、権利を犠牲にするよう教えるべきではありません。私たちがすべての子どもに学んでほしいと願うことは単純明快です。「他人を思いやることは大切ですが、自分の気持ちや安全も同様に大切だ」ということです。
*「タイ徒然記」とは、タイで現地統括を務める会田やプログラム・アシスタントのホムケイトが日々の暮らしでの新たな出会いや発見をつづっているものです。
当財団は、タイにおいて「ミャンマー避難民児童への教育支援事業」を行っています。2021年2月以降、バンコクに隣接するサムットサコーン県に多数のミャンマー避難民が流入。近年、避難民児童の数も急増するなか、この課題に対応するための支援は十分とはいえず、支援ギャップが生じています。避難民児童は、タイ語や慣れない学習環境への適応に困難を抱えており、転学にあたっては従来よりも手厚い教育や心のケア支援を必要としています。さらに、避難する過程で負ったトラウマ、避難先での劣悪な生活環境、社会的孤立などによる、避難児童への保護リスク(暴力、ネグレクト、虐待、搾取など)の高まりも指摘されています。
©︎Juozas Cernius/CARE
Copyright © CARE International Japan, All rights reserved.